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金属板を立平葺きで施工【ニスクカラーPro事例】

「屋根を自分で張り替えるなんて無理でしょ?」――そんな声をよく耳にします。けれども立平葺き(たてひらぶき)は、金属板同士を『かん合』で連結するシンプル構造のおかげで、DIYとの相性が抜群。しかも、材料はサビに強いガルバリウム鋼板(例:ニスクカラーPro)なので、長期メンテナンスコストも抑えられます。本記事では「このページだけ読めば即行動できる」を目標に、具体的な数量計算から安全対策、必要工具、施工ステップ、工学的チェックポイント、コスト試算まで解説します。

それでは、どうぞ。


立平葺きとは?

  • 工法概要
    • 金属板(厚さ0.35〜0.5 mm)を「長手方向」に敷き、一枚ごとにリブ(ハゼ)を立てて雨水を流す直線排水式。
    • 継ぎ目にビスやハゼ締め機を使わず、パネル側面同士をワンタッチで『かん合』させるのでスピード施工。
  • メリット
    1. 軽量(3.5 kg/m²前後)で木造の梁・垂木への荷重負担が小さい。
    2. 継手が縦方向だけ=横目地ゼロ。台風時の横殴り雨にも強い。
    3. ガルバ鋼板の長寿命(穴あき25年保証・塗膜15年保証〈ニスクカラーPro〉)。​Nippon Steel NISCS
  • デメリット
    • 勾配が緩い(1/100以下)と雨が逆流する恐れ。最低勾配は1/30が推奨。
    • 金属ゆえ遮音性・断熱性は下地側で対策が必要(遮音シート+高性能グラスウール等)。

つまり、基本的にはデメリットも他の屋根材と比べても比較的少なく、施工もしやすくDIY向けの施工方法といえるのではないでしょうか!


他の代表的金属屋根工法と選択基準

工法特徴向くケース立平葺きとの比較
横葺き(段葺き)横方向でジョイント、意匠的陰影が強い勾配2/10以上、デザイン重視施工難度はやや高い
折板屋根厚板0.6 mm以上を機械折り曲げ、強靭工場・店舗などスパン9 m超重量が大きく住宅向きではない
瓦棒竪子に被せる伝統金属屋根古民家・町家の意匠保持ハゼ部の止水性は立平の方が上
粘土瓦/スレート高い蓄熱・意匠性重量許容梁+寒冷地以外耐震荷重は金属板が有利

選び方の目安

  • 「既存屋根構造」:屋根合板と垂木が健全で荷重が少ないほど立平葺き向き。
  • 「勾配」:1/30〜1/5の緩勾配は立平か折板、2/10以上なら横葺きでもOK。
  • 「意匠」:直線的モダンなら立平、段陰影なら横葺き、瓦なら和風。

必要工具・資材チェックリスト(一般的な2F 7 m×5 m切妻屋根例)

区分品名規格と目安数量補足
主資材立平パネル(ニスクPro)長さ7 m×幅333 mm ×22枚幅働き333 mmで必要幅7 m→22枚(余裕+2枚)
下葺材改質アスファルトルーフィング1 m×20 m巻×2本耐熱110 ℃以上推奨
役物唐草36 ×14本・けらば板金×10本1本=1.82 m軒先+けらば実寸÷1.82
キャップ後付小口ハゼ本数=パネル枚数先端防水
雪止めエテルナ200型1列なら15個積雪0.5 m未満地域目安
ビスステンレスΦ4.2×45 mm500本垂木ピッチ303 mmなら1枚22本
工具インパクト・角波切断バサミ・差し金・チョーク・ハゼ起こし棒ハゼ締機不要

必要なもの

整形やね板

唐草36 / 唐草45

唐草というのは

「唐草(からくさ)」は、屋根の軒先やけらば(妻側の端)に取り付ける板金部材で、雨水の侵入を防いだり、屋根材をきれいに納めるために使う大事なパーツ。必要数を出すには、以下の手順でOK!


唐草の必要数をカウントする手順

屋根の軒先とけらばの長さを測る

まずは、屋根の外周のうち「軒先」と「けらば」の長さを測る。

  • 軒先(ながし):雨樋がついてる側
  • けらば(妻側):屋根の斜めになってる端の部分

例:

  • 軒先:前後 7mずつ(×2)=14m
  • けらば:左右 5mずつ(×2)=10m 👉 合計:24m

唐草の長さを確認

商品ページによると、1本 1820mm(=1.82m)

つまり、1本で約1.8mカバーできる。

合計長さ ÷ 1.82m = 必要本数(端数切り上げ)

上の例で計算すると:

24m ÷ 1.82m ≒ 13.18本 → 14本必要

💡 プチアドバイス

  • 接合部やカットロス、重ね代を考えて、1〜2本は余裕を持って注文すると安心。
  • けらばと軒先で形状が違う唐草を使うこともあるので、注文前に仕様を確認してね!

小口

参考文献・引用元

https://machiyane-mito.com/works/20230727_hokota-tatehirabuki-fukikae_izumi.html
https://nono-s.com/case/11
https://www.guild-design.com/tag/立て平葺き

これ、何の部材?

  • 正式名称 シンプルライン(かんごう立平葺き)用の 「後付小口(おぐち)」。メーカーや職人のあいだでは 「軒先キャップ」や「サンバナ」 とも呼ばれます。 *「小口」は“切り口/端部”という屋根用語で、板金材の切断面を指します。石川商店

屋根のどこに付ける?

  • 位置 立平葺き屋根の 軒先(雨が流れ落ちる最下端)で、立ち上がったハゼ(リブ)の先端を塞ぐ 部材です。
  • 役割
    1. ハゼの空洞を塞いで 雨水・雪・虫・落ち葉の侵入を防ぐ
    2. 先端を風圧から守り、めくれや浮きを抑制
    3. 端部を隠して 見た目をスッキリ仕上げる(化粧キャップ)
    4. 水抜き穴があり、内部にたまった湿気を排出するタイプもある屋根修理の匠

必須? – 結論:「推奨」だけど実質ほぼ必須

ケース後付小口の要否理由・補足
標準の立平葺き(軒先がそのまま見える)ほぼ必須防水・防虫・風害対策になる。メーカー保証条件に含まれる場合も多い。
軒先を笠木や雨樋で完全に覆う特殊納まり省略可だが要検討端部が外気にさらされない設計なら、省略しハゼを折り返し加工だけで済ませる職人もいる。
DIYで折り返しやコーキングだけで済ませるできなくはないただし見た目と耐久性が落ちるので、既製キャップを付ける方が無難。

ポイント

  • 1枚の屋根パネルにつきハゼが2本 ⇒ キャップは軒先1ヶ所×ハゼ本数 用意。
  • 後付タイプはパネル葺き上がり後に差し込み、ブラインドリベットや小口ビスで固定します。セキノ興産
  • 色は屋根材と同系色を選ぶと目立ちません(ブラウン/ブラック/シルバーなど設定あり)。

まとめ

  • 何? 立平葺きのハゼ端部を塞ぐ「後付小口(軒先キャップ)」。
  • どこ? 軒先のハゼ先端。
  • 必須? 防水・耐風・意匠の観点から“付けない手はない”。特にメーカー推奨納まりではほぼ必須。

DIYでも差し込んでビス止めするだけなので施工は簡単。屋根材と一緒に忘れずに手配しておくと安心ですよ!

(オプション)雪止金具エテルナ

雪国暮らしの方には雪止め金具エテルナというものが必要になるそうです、

工学ワンポイント

  • 「ビス引抜耐力」は約1.2 kN/本(ステンレスドリルねじΦ4.2を厚さ24 mmの野地板+胴縁に止めた場合、N値換算)。風圧0.5 kN/m²でもピッチ300 mmで安全率2以上に。
  • 「ガルバ厚さ0.4 mm」の曲げ剛性EI≒6.8 × 10⁻⁶ kN·m²/m。野地間隔450 mm以下なら、歩行時たわみ1/250以下と実測報告多数。

DIY前の3ステップ事前計画

ステップA 安全設備の確保

  1. 足場:労働安全衛生規則に準じて高さ2 m超は単管+メッシュシート必須。
  2. フルハーネス:改正法(2019年)で2 m以上作業は着用義務。
  3. 天候:風速10 m/s以上は中止、気温35 ℃超は熱中症対策。

ステップB 構造チェック

  • 垂木サイズ確認:105 × 45以上が推奨。
  • 垂木ピッチ:303 mmか455 mmの定尺。腐朽・蟻害は交換。
  • 既存屋根材撤去:アスベスト含む旧スレートは産廃法に沿った専門回収を手配。

ステップC 数量計算と材料発注

  1. 屋根有効幅 × 奥行きを実測(スケッチ必須)。
  2. 唐草・けらば・棟包みを含む外周長さを算出。
  3. 1.82 mで割り切れない端数は必ず切上げ+1本余裕。
  4. メーカー直送は長さ4 m超で大型便扱い=送料増。2分割継手かユニック車手配を選択。

立平葺きDIY施工フロー(7日モデル)

STEP0 下準備(1日目)

  • 既存屋根撤去→廃材搬出。
  • 野地板の増張り(12 mm針葉樹合板をN50釘@150 mm)。
  • ルーフィング張り:軒先から重ね150 mm、ステープル@200 mm。

STEP1 唐草・けらば取付(2日目)

  1. 軒先に唐草36をステンレスビス@150 mmで固定。
  2. けらば板金は野地天端と面一になるようスペーサー(12 mm)を噛ませる。
  3. 継手部はシーリング+25 mm重ね。

STEP2 本体パネル施工(3~5日目)

  • 「墨出し」はけらば基準。チョークラインで働き幅中心を通す。
  • 1枚目はけらば側を立上げ曲げ加工→ビスで固定。
  • 2枚目以降は『かん合』部を上から押圧し隣同士をロック、人力でハゼ閉じ。
  • ビス:パネル1枚につき垂木位置で4列×ピッチ300 mm。
  • 伸縮対策:軒先側のみ長穴ワッシャーでスライド可動量±5 mm確保(温度差60 ℃時のガルバ伸び=7 m×12×10⁻⁶×60 ℃≒5 mm)。

STEP3 小口キャップ・雪止め(6日目)

  • ハゼ端部へ後付小口を差し込み、リベットΦ3.2×8 mmで2点止め。
  • 積雪地域は上から2段目でエテルナ雪止めをかん合+補助ビス。許容すべり荷重1 kN/個。

STEP4 棟包み・最終仕上げ(7日目)

  • 笠木下地45×30胴縁を棟芯に連続設置。
  • 棟包み板金(働き300 mm)を左右50 mmずつ被せてブラインドリベット@200 mm。
  • 全シーリング打設:変成シリコン、厚さ4 mm以上でU字。
  • 完成後、散水試験を軒先から15 分実施し漏水ゼロを確認。

工学的チェックリスト(施工後にセルフ検査)

項目規定値測定方法合格基準
屋根勾配1/30以上レーザー墨出し or 水平器≧2°
ビス止め本数≧22本/枚目視欠落0
ハゼかん合率100 %振動・軽叩きテストズレ・遊びゼロ
ルーフィング重ね≧150 mm目視はみ出し無し
板金端部クリアランス5 mm±2差し金熱膨張許容範囲内
雨樋取付勾配1/300水糸逆勾配なし

予算シミュレーション(7 m×5 m切妻・延床70 ㎡相当)

費目単価数量小計
立平パネル0.4 mm¥1,650/m35 m¥57,750
役物一式¥38,000
ルーフィング¥6,500/巻2本¥13,000
ビス・リベット¥8,000
足場(7日)¥700/㎡150 ㎡¥105,000
工具レンタルインパクト等一式¥12,000
合計約23万円

※専門業者相見積り(関東2025年平均)は同条件で55〜70万円。セルフ施工で約50 %節約可能。


よくある失敗と対策

症状原因対策
ハゼが浮く躯体側の野地歪みパッキン付きビスで中間固定を追加
雨音が大きい断熱材不足グラスウール24 k+5 mm遮音シートを天井側へ増設
結露水が唐草裏へ回るケラバ&唐草取合い未処理防水テープ+再シーリング
夏場の表面温度75 ℃低反射色高反射塗装(SRI50以上)をトップコート

法規と保険ワンポイント

  • 日本の木造住宅は高さ13 m・軒高9 m以下で確認申請不要(増築を除く)が、構造耐力や防火上主要構造部を変更する場合は確認申請が必要。
  • 足場を組むときは「墜落・転落災害保険」加入を強く推奨。1日¥1,200前後で補償1,000万円クラス。
  • ガルバリウム鋼板は建築基準法「告示第1474号・不燃材料」に該当し、22条区域の屋根防火規制もクリア。


まとめ

1週間で延床70 ㎡クラスの屋根を新品同様に——しかも材料費を含めて約23万円。立平葺きは、工程さえ守れば素人でも十分実現できます。「工具を握ったことがない」という方も、今回の4段階フローとチェックリストを順に消し込めば迷うポイントはゼロ。ぜひ、最初の一歩を踏み出してください。


参考リンク・動画

  • 日鉄鋼板「ニスクカラーPro」公式カタログ(塗膜保証・物性値)
  • 建材ステーション楽天店「シンプルライン2型」(実勢価格)​楽天市場

本記事は2025年4月時点で公開されている製品仕様・法令を基に構成しています。最新情報は必ずメーカーおよび自治体の公式資料でご確認ください。

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