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屋根の解体~補修作業中の「途中の雨じまい」完全ガイド【DIYリノベ】

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サブタイトル:パターン別に「どこで中断しても濡らさない」ための工法と手順(木造2階建て・スレート想定/DIYリノベ)

こんにちは、DIY Renovaです。

この記事では、屋根の「解体や張り替えの最中」に雨が来ても家を濡らさないための「途中の雨じまい」を、パターン別に、素材・釘一本の扱いレベルまで落として解説します。
今回は主に事例として化粧スレート(コロニアル等)を取り上げていますが、大体の素材は同じ構造で重なっているので何かしらの参考になれるのではないかと思います。

「スレートの解体そのもののやり方」は別記事にまとめてありますので、ここではあくまで「作業を中断する瞬間の防水」を主役にします。

対象は日本の木造戸建て(最大2階)。完全DIYでも再現できるように、工学的な数値の目安や判断基準も載せます。法律や安全についても最低限守るべきポイントを明記します。文章は長めですが、この記事だけで迷わず行動に移せる構成を目指してまとめました。

そもそも自分の家のリノベーション・リフォームってどこまでやっていいの?どこから始めればいいの?というかたはこちらから。具体的なリフォームの工程や施工などについて知りたい方はこちらのページも是非ご覧ください!

それでは、どうぞ。


Table of Contents

前提と大枠の考え方

  • 想定材料:「既存=化粧スレート」「下地=野地板(厚み12mm前後が多い)」「ルーフィング=改質アスファルト系(粘着・非粘着いずれも)」
  • 目的:「途中で作業を止めても、室内側を濡らさない」。ポイントは「排水経路を必ず上から下へ連続させること」「逆水(上向きに水が入ること)を防ぐ重ね順」「風に負けない固定法」の3点です。
  • 安全と法令(日本):「足場+手すり+フルハーネス」が基本です。DIYであっても転落は命に関わります。アンカーは強固な構造材へ確実に取り、ロープのたるみを管理してください(12kN程度の耐力を持つ製品が一般的目安。これは人の落下荷重を受けるための目安であり、単なるビス留め金物では代替不可)。
    また、2006年以前のスレートには石綿を含むものがあるため、疑いがある場合は作業を中止し、所管自治体の指導に従い専門業者に相談してください(切断・破砕・飛散は厳禁)。
    廃材は自治体のルールに沿って分別し、飛散・落下防止の養生を徹底します。

「解体がどこまで進んだか」という“進行段階”に応じて最適な雨じまいを選べるよう、素材レベル・釘一本の扱いまで落とし込んで解説します。


前提と基本原理(判断の軸を先にそろえる)

雨じまいの三原則

  1. 「雨水の流れを上から下へ連続させる」
    すべての重ねは水上→水下を勝たせ、逆水をつくらないことが最重要です。
  2. 「面で押さえて、風に負けない」
    シートはハトメのみで引っ張らず、桟木+座金付きビスで“面固定”します。
  3. 「端部・貫通部・谷・壁際のディテール優先」
    漏水は面内ではなく端や取り合いから起きます。時間が足りない日は“面より端”を仕上げてから撤収します。

数値の目安(素人でも判断を外さない最低限)

  • 風圧の概算:速度圧 q≈0.6×V²(kN/m²、Vはm/s)
    例:V=20m/sで q≈0.24kN/m²(およそ24kgf/m²)。1.8×3.6mのブルーシート1枚で約155kgf相当の力が面全体に作用します。よって「面固定」が必須です。
  • ルーフィング重ね代の目安:
    勾配3/10以上→横重ね100mm以上、縦継ぎ150mm以上。
    勾配3/10未満→横重ね150mm以上、縦継ぎ200mm以上。
    端部(棟・谷・ケラバ・軒先)は上記より50〜100mm増しにすると安心です。
  • 降雨量の感覚合わせ:10mm/hは屋根の「たまり」やすい部位に負荷をかけます。シートの谷状たるみを作らない・水路を軒先へ誘導することが重要です。

安全・法令・石綿への配慮(日本)

  • 高所作業は足場・手すり・フルハーネス・親綱を前提としてください。
  • 2006年以前のスレートには石綿含有の可能性があります。疑いがあれば切断・破砕・研磨を行わず、自治体の指導に従い専門業者に相談してください。
  • 廃材・釘・粉じんの飛散防止(防炎メッシュシート等)と近隣配慮は必須です。


「途中の雨じまい」解体進捗別パターン分類と選び方

進み具合別パターン(ステージ0〜5)

「どこまで解体が進んだか」で雨じまいの作法は少しずつ変わります。各ステージで「目的→リスク→方針→手順→チェック→数量目安→翌日の戻し方」の順にまとめます。

ステージ0:解体前(準備と初動の養生)

  • 目的:解体開始直後に雨が来ても1時間以内で“仮止水”まで到達できる体制を事前に作る。
  • 主なリスク:出だしで時間を使い、端部処理が未完のまま雨に当たる。
  • 方針:垂木芯マーキングと“面固定資材の即応化”。
  • 手順(素材レベル)
    1. 足場・防炎メッシュシート・親綱を設置。
    2. 屋根上から垂木芯を探し、棟・ケラバ・軒にチョークライン。
    3. 桟木を必要寸にカットし、ブルーシート端の折り返し(2重にして裂け対策)を事前に作っておく。
    4. 座金付きビスは屋根上に無造作に置かず、腰袋へ小分け。
  • チェック:ビスは垂木に効かせる構成になっているか/撤収90分前のアラーム設定。
  • 数量目安:3.6×5.4mシート×2〜3枚、桟木計20m、座金ビス200〜300本、ブチルテープ2〜3巻。
  • 翌日の戻し方:資材は雨に当てない保管。ブチルは夏場は日陰・冬は保温で粘着を維持します。

ステージ1:棟板金・雪止め金具だけ外した段階

  • 目的:棟と金具の穴からの浸水を止める。
  • リスク:棟の水平継ぎ・釘穴からの逆水。雪止めベースがシートを裂く。
  • 方針:「点をつぶす+棟だけ片流れで養生」。
  • 手順
    1. 雪止めを先に全撤去。外した穴はブチルで点シール。
    2. 棟板金・貫板を外す。貫の釘穴も点シール。
    3. 棟の水上側からブルーシートを片流れで被せ、重ねは水上→水下を勝たせて150mm以上。
    4. シートの固定は棟芯・ケラバ・軒で桟木+座金ビスを300mmピッチ。
  • チェック:重ね方向が1箇所でも逆転していないか/シートの谷ができていないか。
  • 数量目安:ブチル1巻、桟木6〜8m、座金ビス100本程度。
  • 翌日の戻し方:シートをめくっても再利用できるよう折り返し部の破れを点検。

ステージ2:片面のスレートを数列外した段階

  • 目的:露出した野地を「面」で止水してからシートで二次保護。
  • リスク:野地直撃のにわか雨/粘着ルーフィングの端末からの浸入。
  • 方針:「粘着ルーフィング(露出許容タイプ)→ブチル端末補強→上からシート」。
  • 手順
    1. 野地清掃(砂・鉄粉・釘屑)→乾拭き。
    2. 粘着ルーフィングを水下から横張り。横重ね100〜150mm、縦継ぎ150〜200mm。ローラーで圧着。
    3. 端部はブチルで「Z状」に面シール(逆水を突破させない折り返し形)。
    4. 上からブルーシートで二次保護。側端は桟木で面固定。
  • チェック:継ぎは“千鳥”になっているか/端末に指先で粘着を感じるか(浮きはやり直し)。
  • 数量目安:ルーフィング1巻(20m)で実効17〜18m²、ブチル1巻、シート1〜2枚。
  • 翌日の戻し方:ルーフィング表面の汚れを乾拭き→次列を上勝ちで継続。

ステージ3:片面の半分以上を撤去した段階

  • 目的:風荷重が増えるため“面固定の分割”と端部ディテールを強化。
  • リスク:大判シート1枚での剥離・破断、ケラバ・棟からの侵入。
  • 方針:「シートは2〜3枚に分割」「仮ケラバ・仮棟で水返し」「水下は必ず完結」。
  • 手順
    1. 水下(軒)まで粘着ルーフィングを伸ばして面防水を確保。
    2. ケラバにはL曲げの仮板金を被せ、上端をブチル+気密テープで押さえ。
    3. 棟は簡易の仮笠木(平板を山折り)で覆い、継ぎは150mm以上+ブチル。
    4. ブルーシートは流れ方向に重ねて2〜3枚で覆い、各枚を桟木+座金ビスで面固定(300mmピッチ)。
  • チェック:分割シートの重ねは必ず上流を勝たせて150mm以上/ケラバ側は特にビス緩みなし。
  • 数量目安:仮板金(ケラバ・棟)5〜8m、ブチル2巻、シート2〜3枚、座金ビス200〜300本。
  • 翌日の戻し方:シートを外す順序は「水下→水上」。端部テープは汚れが出たら貼り替え。

ステージ4:全面撤去直前(棟〜両面野地露出が近い)

  • 目的:両面へ漏水が回らない“全周ディテール”を先行整備する。
  • リスク:棟・谷・壁際での逆水/強風同時被害。
  • 方針:「全面粘着ルーフィング1層+全周の仮水切り金物」。
  • 手順
    1. 可能な範囲を一気に野地出し→砂や釘屑を除去。
    2. 粘着ルーフィングを全面に横張り。棟は片面立ち上げ→反対面を上勝ちで100mm以上跨ぐ。
    3. 軒先に仮水切り金物(ガルバ)を通し、EPDM座金ビスで垂木芯に200mmピッチ固定。
    4. 谷は仮谷板金を敷き、両縁をブチルで面シール。
    5. 壁際は立ち上げ100〜150mm+気密テープで端末押さえ。
    6. 上からシートを棟越えで二重化。
  • チェック:全周で「上勝ち」になっているか/棟・谷の継ぎに“千鳥”が効いているか。
  • 数量目安:ルーフィング2〜3巻、仮水切り・仮谷・仮棟計20m前後、ブチル3巻、座金ビス300〜400本。
  • 翌日の戻し方:紫外線で粘着が弱る前に次工程へ。表面汚染は乾拭き→圧着し直し。

ステージ5:両面をほぼ撤去済み(仕上げ前の最終仮止水段階)

  • 目的:長雨・強風でも凌げる暫定“屋根”を作る。
  • リスク:面全域からの侵入/仮設の緩み。
  • 方針:「全面粘着ルーフィング+全周仮板金+シート二重化+室内二次養生」。
  • 手順
    1. 粘着ルーフィングを全面・全周で連続させる。端部はブチルで連続シール。
    2. 軒・ケラバ・棟・谷に仮板金を入れ、継ぎは150mm以上。
    3. ブルーシートは棟越えで2層。各層を別の桟木ラインで固定し、層間の重ねも上勝ち。
    4. 室内側でポリシートを張り、野地目透きを通るミスト侵入を二重で受ける。
  • チェック:ビスの戻り無し/シートの谷たるみ無し/重ね逆転無し。
  • 数量目安:シート3枚以上、桟木25〜30m、座金ビス400本、ブチル3〜4巻。
  • 翌日の戻し方:外周から内側へ順に解体→仮板金を外すところは必ず端末をテープで仮封しておく(“端を開けたら端で閉じる”の原則)。

「途中の雨じまい」天候パターン分類と選び方

作業の中断にはだいたい次の4パターンがあります。時間と天候で使い分けます。

  1. 「小休止・昼休み・1~3時間の離脱」
    →「ブルーシート+仮桟木+座金ビス固定」中心。谷・壁際はテープ補助。
  2. 「日跨ぎ(夕方~翌朝)・にわか雨の可能性」
    →「粘着ルーフィングを露出防水として仮完了」+上からシートで紫外線・風対策。
  3. 「数日~1週間の中断」
    →「作業帯を区切るストリップ工法(通りごと)」で毎日“水下完結”。部位別に仮板金・ブチルで止水補強。
  4. 「前線・台風接近で高風速・大雨が想定」
    →「野地まで戻して全面粘着ルーフィング+仮水切り金物」までやり切る。シートは二重化し、風荷重計算の目安を満たす固定。

選び方の簡易基準:

  • 降水確率40%以上・予報雨量10mm/h以上なら「2」以上を選択(短時間でも粘着ルーフィングで面防水を確保するのが安心)。
  • 予想風速15m/s以上(瞬間20m/s級)なら、シート単独は危険が増すため固定を強化し、できれば「2」もしくは「4」へ格上げ。
  • 日没1.5時間前を切ったら、中途半端に開口を増やさず「既に剥がした範囲の雨じまい完了」を優先。

事前準備:必要工具・資材(リンク差し込み用)

「これがあると再現性が上がる」ものを列挙しておきます。商品名は一般名で記載します。実際の購入時は各自で仕様を確認してください。

  • ブルーシート(#3000以上、ハトメ強化タイプ)…例:サイズ3.6×5.4m等
  • 仮留め用桟木(2×2、もしくは30×40程度の垂木材・乾燥材推奨)
  • 座金付き木ねじ(EPDMワッシャー付 4.5×45〜5.5×50mm程度、野地厚・根太位置で選定)
  • アスファルトルーフィング
  • ブチル系防水テープ(片面・両面
  • 気密防水テープ(不織布・フィルム系、重ね代の風雨補助)
  • 谷用仮板金・ケラバ仮水切り(0.35~0.5mmのガルバリウム等、既製品または折り曲げ品)
  • ルーフィング用ローラー(圧着)
  • マーキング用チョークライン・下地探し(下から垂木芯位置を拾えると固定が確実)
  • フルハーネス・ランヤード・仮設親綱(水平ライフライン)
  • 防炎メッシュシート(足場外周)
  • 雨樋用養生(落ち葉除けネットやスポンジで一時フィルタ形成)

工学的な基本原理(判断に効く最小限の数式)

  • 排水量の目安:屋根面の単位幅あたりの表面流量は「降雨強度 i(m/s)×屋根投影面積 A(m²)」が概略。
    例えば10mm/h(=2.78×10⁻⁶ m/s)の雨で、幅3m×流下長5mの面なら Q≈2.78×10⁻⁶×15=4.17×10⁻⁵ m³/s(約0.15L/分)。一見少なく感じますが、シートの「たるみ」部に瞬間的に集まると漏水を招きます。
  • 風圧の目安:速度圧 q≈0.6×V²(kN/m²、Vはm/s)。V=20m/sで q≈0.24kN/m²(=24kgf/m²程度)。1.8×3.6mのシート1枚に約155kgf相当の力が面全体に作用し得る計算です。ハトメ一個に集中させない固定が必要な理由です。
  • 重ね代の合理:水は上から下へ。重ね代が100mmで屋根勾配3/10(約17°)なら、毛細上がり・風圧逆流に一定の余裕が生まれる。勾配が緩いほど重ね代は増やす(例:3/10未満なら150mm以上を目安)。「重ね方向」は必ず水上→水下へ階段状。

パターン1:小休止~数時間の離脱は「ブルーシート+仮桟木+座金ビス」

短時間なら「速さ」と「確実性」の両立が鍵です。

手順

  1. 「開ける範囲を最小」にする
    谷・壁際・トップライト周りは可能なら開口しない。雨のリスクが高い部位だからです。
  2. 水下側(軒先側)に「受け」をつくる
    軒先鼻隠しの上に仮桟木を沿わせ、座金ビスで野地の下地(軒先根太/垂木)へ固定。ピッチは200~300mm目安。
    「受け」にシートの裾を折り返してタッカー留め→さらに桟木で押さえます。これで逆風でもめくれにくい。
  3. シートの展張
    水下→水上へ向かって広げ、シート上端は棟を少し越える長さを確保。水上側も桟木+座金ビスで押さえます。ハトメだけに頼らず、面で押さえるイメージ。
  4. 側端(ケラバ)処理
    ケラバ側は風を受けやすいので、側端にも桟木を平行に走らせ、300mmピッチで座金ビス留め。外壁との取り合いがある場合は、外壁側へブチルテープを貼り込み、シート端を折り返して圧着。
  5. 雨道の確保
    シート上に「谷」状の溝ができると水が溜まるので、桟木位置を対角線的に配置して水を軒先へ誘導。
    雨樋に葉ゴミ等があると溢れるので、作業前に清掃を済ませておきます。
  6. 部位別のひと工夫
    • 既存棟板金を外した直後:棟芯に桟木を当て、両側へシートを分けて被せる(二枚使いも有効)。
    • 既存雪止め金具は先に取り外し(残すとシートが切れる)。取り外し痕の釘穴は後述テープで先行処理。

失敗あるあると回避策

  • シートが「太鼓張り」だと風で破れる →「少したるませる+面で押さえる」。
  • ハトメだけでロープ張り →局所破断に直結。必ず桟木+座金ビスの面固定を併用。
  • 軒先で水が裏へ回る →裾は必ず外に出す。鼻隠し背面に回さない。
「太鼓張り」とは・・・建具の骨組みの両面に板や紙を張り、内部を中空にすることで太鼓に似た構造にしたものを指します。建築用語としては、さらに「太鼓張り襖(ふすま)」という特別な襖を指すことが多く、これは框(かまち)や引手(ひきて)を付けずに、簡素で美しいデザインが特徴で、茶室によく用いられます。


パターン2:日跨ぎ・にわか雨は「粘着ルーフィングを露出防水として仮完了」

夜を越えるなら、ブルーシート単独より「面防水」を先に作ってからシートで守るほうが確実です。

使う材料の考え方

  • 「高耐熱」「露出許容◯日」等が明記された粘着ルーフィング。夏場の屋根表面温度は70℃以上になることがあります(ガルバ上は80℃超も)。記載の上限温度を必ず確認します。
  • 粘着力は製品差が大きいので、端部のブチルテープ補助を前提にします。

手順

  1. 野地清掃
    砂・釘屑・旧ルーフィング残渣を清掃。ホウキ→ブロワ→濡れ拭きの順で粉塵を除去。
  2. 下地マーキング
    垂木芯をチョークラインで出す(のちの仮桟木固定が確実になる)。
  3. ルーフィング張り(横張り・水下から開始)
    • 水下端の重ね代は150~200mm目安。横重ねは100mm以上(勾配が緩い場合は150mm以上)。
    • 継手は千鳥に。ローラーで圧着。端部はブチルテープで「Z状」補強(雨が来ても逆水しづらい形)。
  4. 貫通部・谷・壁際の仮ディテール
    • パイプ:周囲にブチルの「面シール」を作り、さらに上流側に水返し(斜め上がりのテープ)。
    • 谷:仮板金(平板をU字に折ったもの)を敷き、両端をルーフィング上からブチルで面シール。
    • 壁:雨押え板金はまだ外さないor仮で戻す。ルーフィングを壁面に100~150mm立ち上げ、気密テープで押さえる。
  5. 仕上げのブルーシート
    紫外線と突風対策として、上からシートで二次保護。固定はパターン1に準じる。

重要な注意

  • 翌日に再開する場合、粘着ルーフィングの表面に泥や花粉が乗ると次工程で密着不良に。朝一で乾拭きしてから続行します。
  • 「露出◯日」は晴天前提の目安のことが多いので、長雨・台風の気配なら「パターン4」へ。

パターン3:数日~1週間は「ストリップ工法(通りごと)」で毎日“水下完結”

屋根面を「通り=垂木方向の帯」で分割し、1日で「帯の水下から水上まで」を完結させる方法です。毎日、完成帯が1本ずつ増えていくイメージ。雨が来ても未施工帯に水が流れるように組みます。

手順の要点

  1. 朝:今日施工する帯の両側に「仮止めの水切りライン」を作る
    未施工側へ水を逃がすため、帯の境界で逆水が起きないようにブチルテープで段差を作っておく。
  2. 帯内は「軒→棟の順」で野地出し→粘着ルーフィング本敷き→部位別仮板金
  3. ケラバ側・谷側の端は「未施工側に被せる」重ね順で終わらせる
  4. 夕方:帯全体をブルーシートで包み、境界で必ず上流を勝たせる

メリット

  • 部位ごとの納まりを毎日完結させるので、夜間の漏水リスクが小さい。
  • 足場上の動線も安定する(毎日同じ帯幅で手元が整う)。

パターン4:台風・前線時は「全面粘着+仮水切り金物」までやり切る

風圧が強いとシートが頼りになりません。短時間でも、面防水と端部の水返しまで組んでおくと安心です。

手順の骨子

  1. 既存スレートを外す範囲を最小にしつつ、野地を出したらすぐ粘着ルーフィング本敷き(少なくとも全面1層)。
  2. 軒先:仮の「軒先水切り」をガルバで当て、EPDM座金ビスで垂木位置に200mmピッチ留め。
  3. ケラバ:仮ケラバキャップ(L曲げ板金)を被せ、上からブチル押さえ。
  4. 棟:仮棟板金(平板に山をつける程度でも可)で笠木を作り、流入側の重ねを上勝ちに。
  5. 谷:仮谷板金(本設流用でも可)を敷き、両側をテープ+押さえ桟木。

部位別・素材レベルのディテール

軒先(いちばん水が集まる)

  • 「裾を外」に出すのが鉄則。鼻隠しの裏側に回すと逆流します。
  • ルーフィングの端は軒先金物の内側に差し込んでから折り返し、ブチルで端部処理。
  • 既存の雨樋が詰まっていると全て破綻するので、作業初日に清掃を。

ケラバ(風の剥離が強い)

  • シートの側端は「桟木+座金ビス」で押さえ、ハトメは補助。
  • ルーフィング端は側立ち上げ100mm以上+気密テープで押さえ。
  • 外壁との取り合いは、外壁側へ最低100mm立ち上げてから既存の雨押えを仮戻し。

棟(雨水の合流点)

  • 既存棟板金を外す→貫板を外す→釘穴にテープで点シール。
  • ルーフィングは棟で「被せ勝ち」(片面を先に立ち上げ、反対側を上から跨いで100mm以上重ね)。
  • 仮棟板金は山形に折った平板で可。重ね代は150mm以上、継ぎ目はブチルで目張り。

谷(最重要)

  • 先に谷を開けない。どうしても開ける場合は、その日のうちに「仮谷板金+左右のルーフィング差し込み+両縁ブチル」で“面シール”を作る。
  • 谷板上の鉄粉や砂は即座に掃除(針穴の原因)。

壁取り合い(下屋・出窓など)

  • ルーフィングを壁に100~150mm立ち上げ→角は「ハカマ折り」(切り欠いて折り返し)→気密テープで端末押さえ。
  • 既存雨押え板金は仮戻し。最終は新規板金で仕上げる前提でも「途中」は必ず戻して水を切る。

貫通部(フード・配管)

  • 先に型紙(紙テープ)で水の流れを試作→本番でブチルを斜め上がりに貼る。「上流を勝たせる」意識を徹底。
  • 丸穴周囲は両面ブチルで面シール→上流側に“垂れ壁”となるテープを追加すると逆流しにくい。

作業の順序(釘一本レベルで)

  1. 朝一:天気確認、撤収時刻の逆算(15:30や16:00を撤収開始リミットに設定)。
  2. 足場点検→ハーネス・親綱設置(親綱高さは腰上、たるみ管理)。
  3. 既存雪止め金具を先に全撤去(シートやルーフィングを傷めるため)。外した穴はテープで点シール。
  4. 板金は「棟→ケラバ→軒先」の順で外すと雨道のイメージが崩れにくい(谷は最後まで可能なら触らない)。
  5. スレート撤去範囲を最小にし、野地釘の突出・腐朽をチェック。危ない釘は抜くか打ち込み。
  6. 野地清掃→ルーフィング(パターン2/3/4の場合)→ブチル・仮板金→ブルーシート(パターン1なら直ちにシートへ)。
  7. 夕方:全ハトメ・桟木・ビスの緩みを再点検。エッジの「上勝ち」になっているかを一周確認。
  8. 夜間雨の前に室内側養生(天井裏が露出している場合はポリシートで二重化)。

風荷重と固定の「数値目安」

  • 風速20m/sクラスで q≈0.24kN/m²(約24kgf/m²)。1.8×3.6mのシート面で約155kgf相当。
  • ハトメ間隔が90cmとして、端部4点で受けると1点当たり約40kgf超の力。安全率をみると「ハトメだけ」は危険。
  • よって「面で押さえる」=桟木(30×40×シート幅)+座金ビス(300mmピッチ)を基本に。
  • ビスは必ず垂木(45×105等)へ。野地12mmに短ビスを打つだけでは抜けやすい。下地探しで芯を拾うのがコツです。

重ね代の「数値目安」

  • 勾配3/10以上:横重ね100mm以上、縦重ね(継手)150mm以上。
  • 勾配3/10未満:横重ね150mm以上、縦重ね200mm以上。
  • 谷・棟・ケラバなど端部は+50~100mm上乗せ。
    (これは多くのルーフィング施工要領の「一般例」に沿う目安。実施工は製品の施工説明書に従ってください)

天候判断と撤収基準

  • 降水確率40%・10mm/h以上が予測:「パターン2」以上を採用。
  • 突風注意報・台風接近:「パターン4」へ。未施工開口を広げず、面防水を優先。
  • 日没90分前:新規開口をやめ、雨じまいの最終確認に切り替え。
  • 朝露・放射冷却で「濡れた野地」には粘着ルーフィングが付きにくい→ガスバーナーは使わず、乾拭き・時間調整・仮シートで凌ぐ。

よくある失敗とその回復

  • 「シートの谷に水が溜まる」→桟木位置を付け替えて水を軒先へ誘導。中央に“尾根”を作って左右へ落とすのも有効。
  • 「ハトメ破断」→面固定に切り替え。破れ箇所は補修テープ+板当て。
  • 「ブチルが汚れて密着しない」→表面をアルコールで軽く拭き、乾燥後に圧着ローラーで再圧着。
  • 「谷から滲む」→仮谷板金の両縁を一旦はがして清掃→新しいブチルで面シール→巻き込みを増し。

1日の標準フロー例(モデルプラン)

  1. 08:00 足場・安全帯・親綱確認、道具展開
  2. 08:30 雪止め全撤去→釘穴点シール
  3. 09:30 ケラバ板金・棟板金を外す(谷は触らない)
  4. 10:30 既存スレートを必要最小限めくる→野地清掃
  5. 11:00 粘着ルーフィング仮本敷き(今日の帯のみ)
  6. 12:00 昼:ブルーシートで簡易養生(風対策)
  7. 13:00 壁・貫通部・谷の仮ディテール(ブチル+仮板金)
  8. 15:30 終了判断→ブルーシート本養生+全周確認
  9. 16:00 片付け→雨樋点検→室内側養生

施工を支える「小ネタと道具」

  • 下地探し:屋根裏から垂木芯の位置をメジャーで計り、屋根上へ寸法移送。母屋間隔910mm・垂木303mm等のパターンを見抜くとビスが効く。
  • シート端の折り返し:2回折って厚みを出すとハトメの裂けを遅らせる。
  • 「シートは1枚で無理に大面積を覆わない」:風の受け面が大きいほど危険。3.6×5.4mを2枚に分割して流れ方向に重ねるほうが安全。
  • ブチルの保管:夏は日陰、冬は室内で保温して粘着をベストにする。

材料数量の概算(目安)

  • 屋根片面 6m(軒)×5m(流下長)=30m²の場合
    • 粘着ルーフィング(1m幅×20m/巻):2巻程度(重ね分含むと実効17~18m²/巻想定)
    • ブルーシート:3.6×5.4mを2~3枚(重ねて段差をつくる前提)
    • 桟木:流下方向に5m×3本、ケラバ・棟・軒用を加えて合計20~25m
    • 座金ビス:200~300本(300mmピッチ×総延長)
    • ブチルテープ:50mm幅×10mを2~3巻

最低限の法令・マナー(日本)

  • 高所作業は保護具着用、近隣への飛散防止(防炎メッシュシート・工具落下防止)。
  • 廃材・釘は毎日回収。雨樋・敷地内への流出を防ぐ。
  • 石綿(アスベスト)の可能性があるスレートは自己判断で切らない・砕かない。自治体の指示に従い、登録業者へ。


仕上げ工程へ戻すときのコツ

  • 粘着ルーフィング上に泥や粉塵があると仕上げ材が密着しにくい→濡れ雑巾→乾拭き→ローラー圧着でリセット。
  • 仮桟木・ビスを外した穴は必ずテープで点シールしてから本施工へ。
  • 谷・壁際の仮板金は、寸法が合えば本設へ流用可能。傷・曲がりがあれば交換。

まとめ

「途中の雨じまい」は、難しいことをしているようで実は「雨道の連続」「重ねの上下関係」「風への面固定」という3点の徹底に尽きます。
短時間なら「シート+桟木」、夜越えなら「粘着ルーフィングで面防水」、数日なら「ストリップで毎日完結」、台風なら「全面粘着+仮水切り」まで。
数値の目安(風圧・重ね代)を手元に置いて、毎日同じ型で仕上げていけば、DIYでも安定して「濡らさない屋根リノベ」を実現できます。

そもそも自分の家のリノベーション・リフォームってどこまでやっていいの?どこから始めればいいの?というかたはこちらから。具体的なリフォームの工程や施工などについて知りたい方はこちらのページも是非ご覧ください!


参考資料・読み物・動画(実務の裏付けとして)

(本記事の具体的製品仕様・数値は一般的な施工要領の「代表例」をもとにしています。実作業は必ず採用製品の施工説明書と各自治体の指針に従ってください)

  • 一般社団法人日本建築学会「建築物荷重指針・同解説(風荷重)」:速度圧 q≈0.6V² の考え方の背景(専門的)。
  • 住宅金融支援機構「木造住宅工事仕様書」:屋根下葺材の重ね幅・納まりの一般例。
  • 主要ルーフィングメーカーの施工要領書(改質アスファルト・粘着系、高耐熱タイプの露出許容など)。
  • 気象庁「過去の気象データ検索」:地域の降雨強度・風速の目安を把握するのに有用。
  • 現場系動画(ルーフィング施工、谷・壁際の納まり、「ブルーシートの正しい張り方」など)。
  • 各自治体の石綿(アスベスト)対策ページ:スレートの年代・見分け・取り扱い上の注意。
  • 街の屋根屋さん 鹿児島店 「屋根のリフォーム中に雨が降るのは良くない?あなたが気を付けること

付録:チェックリスト(印刷推奨)

  • 今日の「開口範囲」は最小か
  • 雪止め・突起は先に撤去したか/穴の点シールをしたか
  • シート固定は「面で押さえる」方式か(桟木+座金ビス300mmピッチ)
  • 重ね方向はすべて「上→下」で勝っているか
  • 谷・壁・貫通部はブチルで面シールを作ったか
  • 雨樋は清掃済みか/落下物で詰まらない養生をしたか
  • 日没90分前に「雨じまい完了モード」へ移行したか
  • 室内側の二次養生(ポリシート)を忘れていないか
  • 天気・風の見直し(夜間の突風・雷雨)を確認したか

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