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【屋根リノベ】アスファルトルーフィングの施工方法(完全版)—日本DIY手順と工学的根拠【DIYリフォーム】

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こんにちは、DIY Renovaです。

この記事は、日本の木造住宅(最大2階)で屋根をセルフリノベーションする方に向けて「アスファルトルーフィング(屋根下葺き材)」の選び方と施工手順を、工学的な定量情報とともに、迷わず実行できるレベルまで噛み砕いてまとめた完全版です。

専門家に任せるべき場面があるのは事実ですが、技術的内容は省きません。「このページだけで進められる」ことを目標に、道具・材料、解体順序、下地調整、張り方、重ね幅、立ち上げ、谷・棟・ケラバ(破風)・壁取合い・貫通部の納まり、雪国対策、数量計算の式まで具体化します。

それでは、どうぞ。

安全第一:足場・親綱・フルハーネスは前提装備。濡れたルーフィング上は非常に滑ります。強風・降雨・結露時は中止し、資材の落下防止を徹底してください。気象条件が悪い時の無理は禁物です。


Table of Contents

ルーフィングの役割と規格を「数値」で押さえる

日本で一般的に「アスファルトルーフィング」と呼ばれるものの基準は JIS A 6005。中でも「940」は製品の単位面積質量が 1㎡あたり940g以上であることを示す最低水準で、屋根下葺きに広く用いられます(同規格には1500など上位規格もあります)。この規格では、引張強さや浸透状況、耐熱性などの性能要件も定義されています。田島ルーフィング+1

DIYで重要な「張り方の数値」は以下です。

  • 重ね幅(上下=流れ方向):100mm以上。左右(長手方向):200mm以上。ステープル(タッカー)仮留めは重ね部300mm程度間隔。張り方向は必ず水下から水上へ。棟は越えて250mm以上折り返す(のち棟増し張りで上から被せる)。aspdiv.jwma.or.jp
  • 壁・立上りの目安:屋根面より少なくとも150〜200mm以上(木造住宅の実務では200〜250mm確保を推奨)。cad.tajima.jp
  • 雪国の軒先対策(すが漏れ):軒先から1000mm程度を二重張り、または粘着層付改質アスファルト系を採用。〖三州瓦〗防災瓦の株式会社鶴弥

これらの数値は国内団体やメーカー施工要領に拠っています。根拠がある数値に沿えば、DIYでも「雨仕舞」性能を安定させやすくなります。


種類の選び方(勾配・地域・屋根材で決める)

ルーフィングは「素材」と「固定方法」で大きく分かれます。用途に合った選択が要です。

  1. アスファルトルーフィング940(JIS A 6005)
    コスト重視で一般的。金属・スレート・瓦など幅広く使われますが、防水性能・釘穴シール性は上位品に劣ります。nisshinkogyo.co.jp
  2. 改質アスファルトルーフィング(不織布補強)
    釘穴シール性・耐久性が向上。作業性と安全性(スリップ抑制)にも優れ、DIYに扱いやすい定番上位グレード。田島ルーフィング+1
  3. 粘着層付改質アスファルトルーフィング(通称ゴムアス、セルフアドヒアード)
    ステープルを極力使わず全面密着。低勾配や暴風雨前の仮設防水として強い。ただし貼り直し難度が上がるので2人以上の施工が現実的。勾配が3寸未満(約15/100)など緩勾配に推奨。shizureki.co.jp
  4. 透湿系(透湿+遮熱などの機能性)
    屋根裏に確実な通気設計がある場合に選択肢。通気がない直張り金属屋根に安易に使うと、内部結露リスクが逆に上がるため要注意。

選定軸まとめ(実務的な目安)
「3.5寸以上」→改質アスファルト or 940でも許容(地域・屋根材により決定)。
「3寸未満」→粘着層付改質を第一候補。
「積雪・寒冷地」→軒先二重張り+改質/粘着層付、谷・棟は増し張り。〖三州瓦〗防災瓦の株式会社鶴弥+1

詳細については、別途記事にまとめておりますのでこちらも見ていただければと思います!


施工前の段取り(解体順序と下地判断)

解体の基本順序(葺き替えの場合)

  1. 足場・養生。2) 雨樋の外し(干渉する場合)。3) 棟包み板金→ケラバ板金→谷板金の順に「上から下へ」取り外し。4) 既存屋根材(スレート・金属・瓦など)を撤去。5) 旧ルーフィングを剥がす。6) 釘・ステープル残りを完全除去。
    この順序は「上部の押さえから先に外す」が原則。谷板金は雨水を集める要のため、最後に慎重に外します(再利用しない前提)。

下地(野地板・構造用合板)のチェック

  • 目視で腐朽・割れ・撓みを確認。局所的な沈みは根太・垂木の状態を疑い、合板増し張りor交換。
  • ビス・釘の頭が出ていないか、ささくれがないかを手でなぞって確認。
  • 含水が多い(雨濡れ直後など)場合は十分に乾燥させてから施工。
  • 流れ方向の通気層を設ける場合(胴縁・通気垂木など)は、後述の「取合い」の納まりと矛盾しない配置に。

用意する道具・材料(実名とサイズの目安)

  • ルーフィング本体:幅1m×長さ20m(標準)や21m品が多い。改質0.7〜1.3mm厚、粘着層付は1.0〜1.5mm程度が一般的。田島ルーフィング+2田島ルーフィング+2
  • 増し張り用ルーフィング:谷・立上り用に幅500mm前後の補強シート(例:ライナールーフィング500など)。田島ルーフィング
  • ステープル(タッカー)/もしくはルーフィング釘(キャップ付が安全)
  • ブチルゴム防水テープ・防水シール(ジョイント・貫通部補強用)
  • 唐草(軒先水切り)・ケラバ水切り・谷板金(新調推奨)
  • カッター、ヘラ、地ベラ、チョークライン、メジャー、ローラー、皮スキ
  • ハーネス・親綱・安全靴・落下防止コード


施工の全体像(先に俯瞰)

  1. 唐草(軒先水切り)を先付け。
  2. 1段目ルーフィングを「軒先と平行」に水下→水上へ。
  3. 2段目以降も一定方向に張り上げ、棟を越えて250mm以上折り返し。棟は幅1000mm程度の増し張り。aspdiv.jwma.or.jp
  4. 左右の長手方向の継ぎは200mm以上重ね。ステープルは重ね部に300mm間隔。aspdiv.jwma.or.jp
  5. 谷・壁・煙突などの取合いは幅500mm程度の増し張り+ブチルで止水。田島ルーフィング
  6. 雪国は軒先1000mmを二重張り。〖三州瓦〗防災瓦の株式会社鶴弥

以下、迷いやすい「立ち上げ」と「周辺板金の順番」を含め、素材レベルで詳細化します。


立ち上げ・取合いの基本寸法と考え方

  • 「屋根面からどれだけ立ち上げるか」は超重要。壁取り合い・パラペット・立上り部は、仕上げ面より150mm以上(木造住宅では200〜250mmを推奨)。数字の根拠はメーカー標準納まりや技術資料の原則寸法。cad.tajima.jp+1
  • 立上りで「折れ切れ」しやすいので、増し張り用の幅500mmシートで二重化して強度と止水を上げる。田島ルーフィング
  • 壁と屋根の取り合いは、ルーフィングの立上り→壁側の一次水切り→防水紙(透湿防水シート)→外装の順に「水の流れ」を崩さない層構成に。

実施工:ステップバイステップ(葺き替え前提)

ステップ0:周辺板金をどのタイミングで外すか/付けるか

  • 取り外し(解体)順:棟包み→ケラバ→谷→屋根材→旧ルーフィング。
  • 取り付け(新設)順:まず「唐草(軒先水切り)」を先付けし、その上までルーフィングを張り上げるのが国内の要領に合致します。軒先唐草は、先に取付けておくことで雨樋への水の落としを安定させ、ルーフィングの端部を風でめくれにくくします(国内マニュアルでは「改質アスファルトルーフィングを軒先唐草の上まで敷く」と明記)。新東株式会社

ステップ1:基準線を出す

  • 軒先にチョークラインを打ち、水下から水上に向かう通りを確認。特に片流れは稜線(最高点)までの直線性を重視。

ステップ2:1段目(軒先)の張り出し

  • ルーフィングを「軒先と平行」に敷設。
  • 軒先端の納まり:唐草の天端を越えない位置まで張り上げ、唐草天端とルーフィングの取り合い部にブチルテープを併用すると、風雨時の逆流に強くなります。
  • 固定:重ね代を確保した上で、ステープル(またはキャップ付釘)で仮留め。重ね部の針間隔はおよそ300mm。aspdiv.jwma.or.jp

参考動画:板金戦隊様「【ルーフィング】わかりやすく!尚且つ効率的な切り方 止め方 角収め」

ステップ3:2段目以降の張り上げ

  • 上下重ね(流れ方向)100mm以上。左右継ぎ(長手方向)は200mm以上。
  • 長手方向の継ぎ目は「上に来るシートが水をまたぐ」方向で必ず重ねる。勾配が緩いほど重ね代を多めに取るのが実務です。aspdiv.jwma.or.jp
  • 風下側(卓越風が当たる側)に「重ね目の口」を向けないのもコツ。

ステップ4:棟の越え・増し張り

  • 片面から棟を越えて250mm以上折り返し。反対側からも張り上げて棟で重ねる。aspdiv.jwma.or.jp
  • 最後に棟芯をまたぐ幅1000mm程度の増し張りを一直線に通して、雨仕舞上の弱点をカバー。

ステップ5:ケラバ(破風)側の納まり

  • ルーフィングはケラバ水切りの下地面までしっかり差し込み、最上段は「水返し」位置より内側に納める。
  • 立上げは屋根面から最低でも数センチは取り、可能なら破風材に回してブチルで補強。ケラバ板金を後付けし、ビス頭はシール。

ステップ6:谷(V字の雨水集中部)

  • 先に谷芯をまたぐように幅500mm程度のルーフィングを敷いて「増し張り」。田島ルーフィング
  • その上から左右の本張りを持ち込み、谷芯には針を打たない(左右150mmくらいは針打ち禁止帯にする)。
  • 最後に谷板金をかぶせ、板金側の釘は「谷芯から十分離れた高い位置」に。

ステップ7:壁・立上り取合い(最重要ディテール)

  • ルーフィングを屋根面から壁面へ200〜250mm立ち上げ(推奨)。shizureki.co.jp
  • 立上り部は幅500mmの増し張り+ブチルで層間をシール。
  • 後工程で一次水切り→透湿防水シート→外装材の順で「下から上へ」水が抜けるレイヤー構成に。

下記の「板金戦隊」さんの動画がとても分かりやすいのでお勧めです!!(ファンすぎで、同じ道具を購入しちゃいました。)

ステップ8:貫通部(換気棟下地・配管・天窓)

  • 貫通部の上下でルーフィングを切り欠き、「下から上へ」順にフラッシング部品に被せる。
  • 四周は200mm以上の幅で増し張り+ブチルテープ。
  • 天窓はメーカーの専用防水部材指示に必ず従う。

ステップ9:雪国の軒先二重化


勾配ごとの「選定と納まり」の指針(迷いやすいポイント整理)

  • 3.5寸以上(約19.3°以上):改質アスファルト or 940で標準的に可。金属屋根・スレート・瓦など、屋根材側の仕様書優先。nisshinkogyo.co.jp
  • 2.5〜3寸:改質アスファルトを基本に、谷・軒先・棟は増し張りを厚めに。屋根材が金属立平の場合は特に釘穴シール性重視で。アイジー工業株式会社
  • 3寸未満(緩勾配):粘着層付改質アスファルト(セルフアドヒアード)を推奨。長手方向の重ねも密着して漏水の目を減らす。shizureki.co.jp+1
  • 通気層なしの直張り金属:透湿系は基本NG。やっていいのは樹脂屋根材に限ります。遮熱+改質アスファルト系で熱と結露の両面対策を。

数量の見積り(ロール本数の計算式)

標準ロール:幅1m×長さ20mとすると、上下重ね100mmを前提に「実効段歩み」は0.9m。理論上の一巻あたり実効被覆面積は約 0.9m × 20m = 18㎡。左右継ぎ200mmや切り欠き、谷・立上り・仮止めによるロスを見て、+10〜20%の余裕を推奨。

  • 例)屋根面積 100㎡ の片流れ
    必要巻数 ≒ 100 / 18 × 1.15(15%余裕) ≒ 6.4 → 7巻を手配。
  • 例)切妻で谷2本・貫通2か所(ロス大)
    同様に +20% を見ておくと安心。

重ね代の数値根拠は国内施工要領(上下100mm、左右200mm)より。aspdiv.jwma.or.jp


よくあるミスと対策

  1. 重ね方向の逆転
    水上のシートが上になるよう、必ず水下→水上へ。これが崩れると毛細管現象で吸い上げが起きます。
  2. 重ね幅不足
    上下100mm、左右200mmを最低ラインに。緩勾配や風当たりが強い面は冗長に。aspdiv.jwma.or.jp
  3. 立上り不足
    150〜200mm未満の立上りは雨押え金物側で不具合を誘発。200〜250mmを目安に。kanema2.com+1
  4. 谷芯への針打ち
    谷は水量が最大。芯から十分離し、先行で増し張り+後で谷板金で押さえる。田島ルーフィング
  5. 雪国の軒先軽視
    すが漏れ帯の二重化を怠ると、最初に不具合が出ます。1000mmを目安に二重張り。〖三州瓦〗防災瓦の株式会社鶴弥
  6. 透湿系の誤用
    通気がない直張り金属屋根に透湿系を入れると内部結露を誘発。遮熱+改質系へ方針転換を。

施工チェックリスト(現場で読み上げ用)


仕上げまでのつなぎ(仮防水としての注意)

改質や粘着層付であっても、ルーフィング単体は恒久防水ではありません。屋根材施工までの「仮防水」として雨仕舞を保持するイメージで、早めに屋根材を葺き上げましょう。粘着層付は特に直射日光での粘着増加・埃付着が施工性を落とすので、貼ってからの放置期間を短く。


海外の優れた考え方の取り入れ方(日本での適用上の注意)

海外(北米など)では、軒先「アイス&ウォーター」相当の自着防水材を標準化する地域が多く、雪氷・凍結ダム対策に効果的です。

日本でも雪国では「軒先1000mm二重化」や「粘着層付」をローカルルールとして取り入れるのが合理的です。〖三州瓦〗防災瓦の株式会社鶴弥

自分の施工場所(工事場所)の気候に合わせて、臨機応変に貼るのが吉です!

  • 「北米などで軒先に“アイス&ウォーター(自着式ビチューメン膜)”を標準採用」する根拠はアメリカ建築基準(IRC)と材料規格(ASTM D1970)に明示されています。ASTM International | ASTM+3ICC デジタルコード+3ICC デジタルコード+3
  • 氷ダム・風雨逆流対策として、軒先から外壁内側ラインの少なくとも約610 mm(24 in)上まで連続して貼るのが国際的な標準です。ICC デジタルコード+2Fine Homebuilding+2
  • 日本で「軒先1000 mm(二重化)」や「粘着層付」をローカルルールとして採用すること自体は合理的だが、全国一律の法令義務レベルまででは現在ありません。日本の公的仕様書や解説は材料規格(JIS A 6013 等)や「要所の増し張り」を求めるが、長さ1000 mmの数値を全国基準としては特定していません。国土交通省+2スミアイ情報+2
  • 「二重張りで水が逆流する/毛細管現象が起きるか」については、重ね方向(必ず下→上)・十分な重ね幅・粘着一体化(自着膜)・軒先水切りとの取り合いが正しければ、逆水や毛細上昇のリスクは低減できるんです。むしろ氷ダム時の漏水には自着膜が有効とされています。ビルディングサイエンス+2Building America Solution Center+2

以下、詳説。

1) 海外(北米)での標準と効果
  • IRCは積雪・氷ダムの恐れがある地域で「アイスバリア(ice barrier)」を義務づけ、方法は「二層の下葺きを接着」または「自着式ポリマー改質ビチューメンシート(=アイス&ウォーター)」としている。適用範囲は「軒の最低縁から外壁内側のラインを少なくとも24 in(約610 mm)超える位置まで」連続被覆することと定義されている。ICC デジタルコード
  • 自着式の材料仕様はASTM D1970に規定され、氷ダムによるバックアップ水の侵入防止を目的として、厚さ・付着性・シール性(釘穴自己シール)等の性能要件が定義されている。ASTM International | ASTM
  • 氷ダムがもたらす逆流・漏水メカニズムと対策としての「eaves部 自着膜」は、Building Science等の技術資料でも繰り返し示されている。ビルディングサイエンス+1
2) 日本での適用(注意点)
  • 公共建築の標準仕様書やガイドは、改質アスファルト系ルーフィング(JIS A 6013)等の使用や「要所の増し張り」を求めるが、軒先1000 mm二重化を全国一律の規定として直接明文化しているわけではない。従って「地域・設計・メーカー仕様に応じてローカルルールで強化する」という整理が妥当といえるでしょう。国土交通省
  • なお、日本の公的技術資料でも「アイスダム(融解→流下→軒先凍結)が起こり得る」ことは示されており、寒冷・多雪地帯では軒先の防水強化が合理的である。国土地理院
  • 瓦メーカー等の施工要領でも、軒先水切り上に重ね、接着テープ等で密着させる取り合いが示される(メーカー最新版を要確認)。〖三州瓦〗防災瓦の株式会社鶴弥
3) 「軒先だけ二重張り」で逆流・毛細管現象は?

逆流・毛細管の主因は「逆水ラップ・重ね不足・段差で停滞水が生じる納まり・風圧での吹き込み」である。対策を守れば、軒先二重化それ自体が逆流を誘発するわけではない。

実務上の要点:

  • ラップ方向と重ね幅:必ず「下→上」の順に敷設し、メーカー規定(例:縦100 mm以上、横200 mm以上等)を守る。これにより重ね目で毛細上昇しにくい「順水」ラインとなる。arise1.jp
  • 自着式の活用:自着膜は重ね・釘穴を自己シールし、風雨・氷ダム時の逆流に強い(ASTM D1970の対象目的)。特に緩勾配や多雪域では有効である。ASTM International | ASTM
  • 軒先水切りとの取り合い:
    • 実務・団体資料では「軒先は水切りの上に下葺きを出す」ことが基本。自着膜を使う場合、地域の検査慣行やメーカー指示により「水切りの上」または「下」に敷く方法が併存するため、採用システムの指示に従う(NRCA・IRC・メーカーで解釈差がある)。
    • いずれの方式でも、段差部は「ストリッピングシート(幅広の自着片)」で被覆して毛細路を断つ等のディテールが推奨される。Journal of Light Construction
  • 勾配と全面貼りの是非:勾配が緩いほどラップ下への滞水・風圧水の侵入リスクが上がるため、自着膜の面積を拡げる(谷・軒先〜外壁内側ライン超まで、場合により全面)設計が北米寒冷地で行われる。Building America Solution Center

以上より、「軒先だけ二重」という考え方自体は、寒冷/多雪条件において合理的であり、国際的にも裏付けがある。ただし、逆流・毛細管を避けるためには、(1)順水ラップ、(2)規定重ね寸法、(3)自着での密着、(4)水切り・軒樋との正しい取り合い、(5)必要長さ(少なくとも外壁内側ライン+約610 mmまで)を確保することが肝要である。ICC デジタルコード

4) 実務チェックリスト(逆流・毛細管対策)
  1. 外壁内側ライン+約610 mm以上まで、軒先から連続した自着膜を確保する。ICC デジタルコード
  2. ラップは下→上、縦目地は最小150 mm程度ずらす(メーカー推奨値に従う)。arise1.jp
  3. 軒先水切りとの取り合いは、採用システムの指示(eaveでは水切り上に自着膜、または水切り下+ストリップ張り)を厳守する。Journal of Light Construction
  4. 低勾配(≲3/12)・多雪・谷部は、自着膜の適用範囲拡大や二重化を検討する。ナチ協会
  5. 使用材料はJIS A 6013等に適合(日本)/ASTM D1970等(北米相当)を確認する。国土交通省

施工後の確認ポイント

  • 棟・谷・立上り・ケラバの順で水を追いながら、逆目・重ね不足・針打ち位置を再点検。
  • ルーフィング上の切り屑や古釘を完全撤去(刺さり・錆跡の原因)。
  • 強風予報時は仮留め箇所を増やし、端部をブチルで補強。屋根材搬入前の養生(ブルーシートをルーフィングに直張りしない)。

まとめ——今日やることリスト

  1. 勾配・地域条件で「改質 or 粘着層付」を決める(3寸未満は粘着層付)。shizureki.co.jp
  2. ロール本数=屋根面積 ÷ 18㎡ × 1.1〜1.2 を目安に手配。
  3. 唐草先付け→1段目基準→上下100/左右200重ね→棟250折返し+1000増し張り→谷500増し張り→立上り200〜250+増し張り。shizureki.co.jp
  4. 雪国は軒先1000二重。〖三州瓦〗防災瓦の株式会社鶴弥
  5. 透湿系は通気設計がある場合に限る。直張り金属では避ける。


最後に

ルーフィングは「屋根の二次防水」ですが、実際には一次防水(屋根材)に不測の事態があったとき家を守る最後の砦です。だからこそ、重ね代の数値・立上げ寸法・増し張り位置のような「地味だけど決定的に効く」要素を、丁寧に守るだけで性能は大きく変わります。この記事を手順書として、今日の作業にそのまま落とし込んでください。迷ったら(1)重ねは多め、(2)立上りは高め、(3)谷と軒先は二重、を合言葉にすれば大きく外しません。

一緒に頑張りましょう!


そもそも自分の家のリノベーション・リフォームってどこまでやっていいの?どこから始めればいいの?というかたはこちらから。具体的なリフォームの工程や施工などについて知りたい方はこちらのページも是非ご覧ください!

参考文献・メーカー資料・動画(実務で役立つ一次情報)

  • 屋根下葺き材 施工要領(上下100mm/左右200mm、針300mm、棟250mm折返し等の基本数値が明記)aspdiv.jwma.or.jp
  • 新東「フックシングル」施工要領書(軒先唐草の上まで敷く運用の例)新東株式会社
  • まもりすまい保険 設計施工基準(JIS A 6005適合品の採用規定の例)filebox.mamoris.jp
  • 日新工業「ルーフィングの選定方法」(アスファルト/改質/粘着の性能比較と選定軸)nisshinkogyo.co.jp
  • 田島ルーフィング「屋根下葺材/仕様」「ライナールーフィング500」(仕様・谷や立上りの増し張り材)田島ルーフィング
  • シズレキ「住宅用防水材カタログ」(勾配3寸未満は粘着層付を推奨、立上り250mm推奨、重ね代の明記)shizureki.co.jp
  • 鶴弥 施工要領(積雪地域の軒先1000mm二重張り推奨、3寸未満の粘着層付採用)〖三州瓦〗防災瓦の株式会社鶴弥
  • IG工業 施工資料(勾配区分と指定下葺き材の考え方の例)アイジー工業株式会社
  • JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)の基準値(940・1500など)田島ルーフィング

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