今どきの住宅の水道状況 ― リノベする人が知っておくべき配管トレンドと業者への逆提案ポイント

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はじめに:この記事でわかること

築20〜40年の住宅をリノベーション・スケルトンリフォームしようとすると、必ずぶつかるのが「水道どうする問題」です。壁や床を剥がしてみたら、鉄管がサビで赤くなっていた、土台が排水管のために大きく切り欠かれていた、給湯機の配管のために基礎に大穴があいていた ── 古い住宅では珍しくありません。

ところが、施主の側が「今どきの配管トレンド」を知らずに業者に丸投げすると、「うちの慣れたやり方」で旧来工法のまま組み直されることがあります。後から「ヘッダー工法にしておけばよかった」「土台を欠かないルートが取れたはず」と気付いても遅いのです。

この記事では、リノベ施主が水道業者・設備業者に「こうしてほしい」と自分から逆提案できる材料を、最新の配管トレンドに沿って整理します。給水管の材質、ヘッダー工法、排水ルート、基礎欠損回避、給湯機ごとの配管要件、そして最後に「逆提案チェックリスト」を表で提示します。

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それでは、どうぞ。

なぜ今、リノベ施主が水道を「知る」必要があるのか

水道は「見えなくなる工事」の代表格です。床下・壁内・基礎の中に隠れて、配線・配管系の劣化や事故は使用開始から10〜20年経ってから表面化することが多いと指摘されています(国土交通省, n.d.)。リノベは、その「見えない箇所」を一気に組み直せる希少な機会です。

加えて、2024年4月1日から、日本の水道行政は厚生労働省から国土交通省(水道整備・管理)と環境省(水質基準)へ移管されました(厚生労働省, n.d.)。所管が変わっても給水装置工事の基準そのものは生き続けますが、規制動向を追うときの参照先が変わっている点には注意が必要です。

そして、「資格者でなければ触ってはいけない領域」も明確です。給水装置(建物内の上水配管)の工事は、水道法上、市町村から指定を受けた「指定給水装置工事事業者」のもとで「給水装置工事主任技術者」の管理のもと施工する必要があります(国土交通省, n.d.)。施主が DIY で勝手にメーター下流の本管をいじることはできません。資格者が施工し、施主は「設計と材料選定の意思決定」で介入する ── これが正攻法です。

給水管トレンド:SGP/HIVP/PEX/PB の比較

戦後〜1990年代の住宅では、給水本管・枝管に SGP(亜鉛めっき鋼管)や塩ビライニング鋼管が広く使われていました。しかし、内面のサビによる赤水・流量低下・継手部の腐食が長期的な弱点として知られています(公益社団法人 空気調和・衛生工学会, n.d.)。現代のリノベ・新築でメインに使われるのは、概ね以下の3系統です。

  • HIVP(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管):屋外埋設・量水器まわりなどで採用例の多い樹脂管。塩ビ系メーカーがラインナップを保有しています(クボタケミックス, n.d.)。
  • 架橋ポリエチレン管(PEX):JIS K 6769 で規格化された樹脂管。住宅の屋内給水・給湯で広く使われ、ヘッダー工法と組み合わされることが多い系統です(日本産業標準調査会, n.d.)。
  • ポリブテン管(PB):屋内給湯系で長く使われてきた樹脂管。PEX と並ぶ住宅屋内系の代表格として扱われます。
材質主な用途メリットデメリット
SGP(鋼管)旧住宅本管・露出配管強度が高い、衝撃に強い内面腐食で赤水、継手部の長期信頼性に課題
HIVP屋外埋設・地中本管耐衝撃・耐食、屋外で扱いやすい紫外線で劣化しやすく露出配管には不向きとされる
PEX(架橋ポリエチレン)屋内給水・給湯軽量・可撓性・耐震挙動が良い、ヘッダー工法と相性◎紫外線・高温に弱く、温度上限に注意。接続部品質は施工者依存
PB(ポリブテン)屋内給湯高温域で安定、耐久実績がある露出・紫外線に弱い、施工管理は PEX 同様シビア

「樹脂管に変えれば全部解決」ではありません。樹脂管は地震時の追従性に優れるとされる一方で、接続部(メカニカル継手や電気融着の品質)に施工者の腕が出やすい領域です。だから「材質を選ぶ」だけでなく「ヘッダー工法と組み合わせて、接続点を減らす」発想が現代の本流になっています。

ヘッダー工法 vs 先分岐工法 ― 水圧と更新性のトレードオフ

「ヘッダー工法(さや管ヘッダー方式)」とは、給水・給湯の幹線を一度ヘッダー(分岐ボックス)に集約し、そこから各水栓に1本ずつ独立した配管を引く方式です。さや管(保護管)の中にインナー管を通すため、将来の更新時にインナー管だけ抜き差しできるのが大きな特徴です(公益社団法人 空気調和・衛生工学会, n.d.)。

対する「先分岐工法」は、幹線から枝管を直列に T 字で分けていく旧来工法で、初期コストが安く、配管総延長が短く済むのが利点です。ただし、複数水栓を同時使用したときに水圧が落ちやすく、後から1本だけ更新するのも難しい傾向があります。

観点ヘッダー工法先分岐工法
水圧の安定同時使用に強い同時使用で圧低下しやすい
更新性インナー管だけ後で抜き差し可壁を壊して交換が前提
初期コスト高め(材料量が増える)安い
接続部の数少ない(漏水リスク減)多い(漏水リスクが分散)

リノベでヘッダー工法を希望する場合、ヘッダーの設置位置(点検口直下にすると将来の更新がしやすい)を施主側から指定するのが効きます。逆に、賃貸用に短サイクルで回す等の理由でコスト最優先なら、先分岐を選ぶ判断もあり得ます。「全部ヘッダーが正義」ではなく、目的に照らしてトレードオフを取る、というのがフラットな見方です。

排水で土台を殺さない ― 床排水・外周配管の合理性

在来軸組工法の住宅で、最も避けたい施工の一つが「土台の切り欠き」です。土台は基礎と上部構造をつなぐ要の部材であり、横引き排水管のために大きく欠き込むと、地震時の鉛直荷重伝達と水平剛性に悪影響が出る可能性が指摘されています(国土交通省, n.d.)。これは品確法・住宅性能表示制度における耐震等級の評価とも関わる論点です(国土交通省, n.d.)。

そこで現代のリノベでは、便器・洗面・浴室などの排水を「壁排水」ではなく「床排水」中心に組み、土台より上から床下へ落とす、床下に十分なクリアランスを確保し勾配を取りながら外部桝(屋外)まで引く、という発想が標準寄りになっています。排水勾配は HASS(空気調和・衛生工学会規格)系の指針として、汚水・雑排水で 1/50〜1/100 を目安にする運用が広く知られています(公益社団法人 空気調和・衛生工学会, n.d.)。また、二重トラップは封水切れや排水不良を起こしやすいため避けるべきとされ、必要に応じてドルゴ通気弁などの通気部材を組み合わせる設計が推奨されます。

両論併記でいうと、床下ルートは「メンテで床を剥がす手間」が増える代わりに、構造へのダメージを最小化できます。一方で、敷地条件が厳しく床下クリアランスが取れない築古住宅では、ハーフユニットバスと組み合わせて「床排水+外周地中配管」に切り替える方が現実解になる場合もあります。

基礎を壊さない配管経路 ― 地中配管とハーフユニットバス

給湯器の追い焚き配管や、浴室から外部桝までの排水のために、基礎立上り部に直径 75mm 級の貫通穴を複数あけてしまうと、基礎の連続性と鉄筋の被り厚が損なわれます。これは「基礎欠損」と呼ばれ、長期的に耐久性へのリスクが指摘されています(国土交通省, n.d.)。

対策として現代のリノベでよく採られるのは、給湯機の往き/戻り配管を基礎を貫通せず土中(地中)配管で外周回しにする、浴室はハーフユニットバスを採用し土間コンクリートに排水を落として外部桝まで自然流下させる、どうしても貫通が必要なら基礎スリーブ(鞘管)を打設時に仕込んで穴を正方形〜円形に整え補強筋を入れる、といったルートです。土中配管は基礎を傷つけない代わりに「地盤沈下・凍結・経路の長さ」というデメリットがあります。寒冷地では凍結深度以下に埋設し、保温材+凍結防止帯を被せる仕様にする必要があります。両論セットで判断するのが大事です。

給湯機器別の配管要件差 ― エコジョーズ/エコキュート/ハイブリッド

給湯機を入れ替えるリノベでは、機器ごとに配管要件が微妙に異なります。施主としては、機器選定の段階で配管側の制約を理解しておくと、後から「ドレン排水の取り回しを忘れていた」「電源容量が足りない」といった事故を避けられます。

  • エコジョーズ(潜熱回収型ガス給湯機):燃焼排ガスから潜熱を回収するため、酸性のドレン水が出ます。中和器を経由した上で雨水系または合流系の排水へ流す配管設計が必要です(リンナイ, n.d.; ノーリツ, n.d.)。
  • エコキュート(ヒートポンプ給湯機):屋外ヒートポンプユニット+貯湯タンクの2点構成で、貯湯タンク〜浴室間の往き/戻り配管が必須。タンク重量で土間基礎の補強が必要なケースがあるとされます。
  • ハイブリッド給湯機:ガス+ヒートポンプの組み合わせ。配管要件はエコキュート寄りだが、ガス側の供給配管も同時に求められます。

機種が違えば必要な配管・電源・搬入経路がすべて違うので、「決めた機種をベースに配管設計を引き直す」が原則です。

業者に出す「逆提案チェックリスト」

ここが本記事の山場です。リノベ施主が水道業者・設備業者と打ち合わせるとき、紙1枚で渡せるレベルにまとめておくと、相見積りの精度が一気に上がります。

項目逆提案の中身なぜ重要か
給水管材質PEX+HIVP 構成を希望、SGP 再使用は避けたい赤水・腐食リスクの長期回避
工法さや管ヘッダー方式を採用したい同時使用時の水圧確保+将来更新性
ヘッダー位置点検口直下に設置してほしいインナー管交換時に床壁を壊さずに済む
排水ルート床排水を主体に、土台切欠きはゼロを目標土台の構造性能を保全
基礎貫通給湯往戻し・追焚配管は地中外周回し優先基礎欠損の回避
凍結対策屋外地中配管は凍結深度+保温帯仕様寒冷地・冬季凍結事故の予防
通気二重トラップ禁止・必要に応じてドルゴ通気封水切れ・悪臭逆流の防止
納品物水道メーター以降の系統図と材料リストを希望将来の更新・トラブル時の情報資産
資格指定給水装置工事事業者・主任技術者の在籍確認法令適合と施工品質の担保

逆提案は「全部実現してください」ではなく「この中から取捨選択した理由を教えてほしい」のスタンスで渡すと建設的です。業者にも事情があり、たとえば「敷地条件で外周回しが取れない」「先分岐の方が結果的に水圧が安定する間取り」など、現場固有の制約があり得ます。

注意点・よくある失敗

  • 「樹脂管なら全部 OK」と短絡してしまい、紫外線露出部にも PEX を回してしまう。露出部は鋼管または HIVP+保温材が原則です。
  • ヘッダーを壁の中の見えない位置に埋め込み、「更新性が高い」というメリットを自分で潰してしまう。
  • 機器の機種変更(エコジョーズ → エコキュート等)を後から決め、配管・電源・基礎補強がすべて手戻りになる。
  • 解体撤去前に配管系統図を残さず、後から「どこから水を引いていたか」が分からなくなる。

これらは、施主が「逆提案チェックリストを業者と共有していなかった」ことに端を発するケースが多いです。

まとめ:次のアクション

水道は見えなくなる工事だからこそ、リノベ施主の側が「現代の標準」を知っておくと交渉力が一気に上がります。

  • 給水:PEX+HIVP+ヘッダー工法を基本線として提案
  • 排水:床排水主体・土台切欠きゼロを目標
  • 基礎:給湯まわりは地中外周回しで欠損回避
  • 機器:機種を決めてから配管設計を引く
  • 業者:指定給水装置工事事業者の主任技術者管理下で施工、系統図納品をマスト

このチェックリストを片手に相見積りを取れば、「言われた通り工事した」ではなく「一緒に設計した」リノベに近づきます。なお、本記事はあくまで考え方の整理であり、最終判断は現地調査と資格者の設計に基づいて行ってください。

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また、本資料が必ず正しいということではなく、あくまで参考情報としてみてくださいね。

それでは!

よくある質問(Q&A)

Q. 給水管の DIY 交換は施主だけでやって良いですか?

A. メーター下流の給水装置工事は、水道法に基づき市町村から指定を受けた指定給水装置工事事業者のもとで、給水装置工事主任技術者の管理下で施工する必要があるとされています(国土交通省, n.d.)。施主単独でメーター下流の本管・分岐を新設・改造することは、原則できません。逆に、給水装置工事主任技術者の資格者がご家庭にいれば、要件を満たす範囲で DIY 的に進める余地はあるかもしれません。

Q. 古い鉄管(SGP)を全部残したまま、樹脂管に部分置き換えするのはアリですか?

A. 部分置き換えは技術的には可能ですが、残した SGP 側の腐食が進めば結局そちらが弱点になります。スケルトンに近いリノベなら、給水・給湯ともに丸ごと樹脂管化+ヘッダー工法に切り替えるほうが、長期的なメンテコストは安定しやすいと言えます。

Q. ヘッダー工法と先分岐工法、コスト差はどのくらいですか?

A. 一般的にヘッダー工法は配管総延長が増えるため材料費が上がる傾向があるとされます。一方で、将来の部分更新を壁・床を壊さず行える点を加味すると、ライフサイクルコストでは逆転することもあります。築年数と居住予定年数次第です。

Q. 床下にどうしても十分なクリアランスが取れません。それでも土台切欠きゼロは可能ですか?

A. 床上げ+ハーフユニットバス+外周地中配管の組み合わせで回避できることが多いです。それでも難しい場合は、補強金物+追加梁で土台側の損失を補う設計を、構造設計者または資格を持った建築士と相談してみましょう。

Q. 屋外地中配管の凍結が心配です。

A. 寒冷地では凍結深度以下に埋設し、凍結防止帯+保温材で被覆します。電源を取って凍結防止帯を稼働させる際の電気工事は、電気工事士法に基づき第二種電気工事士以上の資格者の作業領域です。資格者が同居していれば DIY 範囲を広げられますが、無資格での結線は避けてください。

参考文献

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