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【セルフリノベ】モルタル外壁解体の手順と必要なもの【DIY】

こんにちは、DIY Renovaです。

セルフリノベーションに興味を持っている皆さん、はじめまして。

ここでは、素人の方でも日本の木造住宅(最大2階建て)を対象に「モルタル外壁の解体」に挑戦する方法を解説します。これから書く手順とポイントを理解すれば、この記事を読むだけで行動に移せるようになるはずです。工学的な観点や定量的な情報も交えながら、ステップバイステップでわかりやすくまとめてみました。長くなりますが、ひと通り読めばやり方に迷わないように工夫してありますので、ぜひ最後までご覧ください。


はじめに

モルタル外壁は、戦後から昭和後期(あるいは平成初期)まで広く日本で普及した外装工法の一つです。「木摺り(きずり)」と呼ばれる下地材の上にモルタル(砂とセメント、水を混合したもの)を塗りつけて仕上げるため、厚さはおよそ15~25mm程度が一般的です。近年はサイディング(板状の外装材)やALCパネルなどの乾式工法が主流になっていますが、築数十年の木造住宅では、まだまだモルタル外壁が残っているケースが多くあります。リノベーションの際に新しい外装に変えるなら、既存のモルタルを解体して撤去する必要があるでしょう。

しかし、「解体は専門業者に依頼しないと危険なんじゃないか?」「大丈夫かな?」という不安があるかもしれません。実は、木造住宅のモルタル壁は、ポイントさえ押さえれば素人でも作業可能なケースが多いです。もちろん無理は禁物で、建物の耐力壁に関わる部分かどうか、また安全対策や法的ルールを順守できるかをきちんと確認しながら進めましょう。

この記事では、

  1. 解体前に知っておくべきこと
  2. 必要な道具と準備
  3. 安全上・構造上の注意点(工学的観点含む)
  4. 解体工法の種類と選定基準
  5. ステップバイステップの解体手順
  6. 解体後の廃材処分とリサイクル
  7. その他のヒント・実例紹介 といった流れで詳しくまとめていきます。また、参考文献や役立つ動画も最後に紹介しますので、ぜひ実際の行動に活かしてみてください。

解体前に知っておくべきこと

建築基準法や自治体ルールについて

日本では、建築物の解体や改築には「建築基準法」や各地方自治体の条例に定められたルールがあります。構造に関わる壁(とくに耐力壁など)を撤去する際は、建築士や行政機関への届け出が必要になる場合があります。小規模な解体であっても、近隣への騒音・粉じん対策を怠ると苦情や行政指導に発展する恐れがあるため、十分注意しましょう。

耐力壁かどうかのチェック

モルタル外壁であっても、「その壁が構造的に建物を支えている(耐力壁)」かどうかは最重要ポイントです。日本の木造住宅では、筋交い(厚み3.0cm程度の斜め材)や構造用合板などで建物の壁が地震や風の力に抵抗しています。もし耐力壁を不用意に撤去すると、地震の際に建物が倒壊するリスクが大きくなります。解体予定の壁が「耐力壁かどうか」は必ず設計図や専門家の意見を参考に確認してください。

アスベスト(石綿)や有害物質の可能性

築年数が古い物件だと、モルタル外壁にアスベスト系の素材が含まれている可能性があります。日本では2006年以降、アスベストの全面使用禁止が施行されましたが、それ以前に建てられた建物では含有している可能性があります。アスベスト含有の有無は素人判断が難しく、専門の検査機関による石綿含有検査が推奨されます。もし「アスベストの疑いがある」という場合は、DIYでの解体は控え、専門業者に委託してください。

モルタル外壁の塗装には、古い建物の場合一部アスベストが使用されている場合があります。事前調査を行っておきましょう。下記の記事が参考になるかと思います。

構造計算(簡易的)と許容範囲

モルタルを撤去することで外壁の荷重が多少軽くなる場合があります。約1m²あたりのモルタルの質量は一般的に25kg前後(厚み20mm程度・含水率を含めた目安)。壁一面(例えば高さ2.4m×幅3.0m=7.2m²)でざっと180kg程度の重さがある計算です。これらが減ることで上部構造への荷重は多少減少しますが、その壁自体の耐震性の寄与度もある可能性があります。木造住宅の耐震性能は主に壁量(壁の合計長さや強度)で決定されるため、「モルタルだけを剥がしても筋交いなど構造体を残すなら問題ない」か、「筋交いや構造用合板を同時に外してしまうのか」でリスクが変わります。ここを踏まえて解体範囲を慎重に決めましょう。


必要な道具と準備

ここでは、モルタル外壁を解体する際にあると便利な道具を挙げておきます。必要に応じて追加してください。

  1. 「防塵マスク」:粉じんを吸い込まないようにするため必須。国家検定合格品(DS2以上推奨)。
  2. 「保護メガネ」・「ゴーグル」:飛散する破片から目を守るため。
  3. 「手袋」:厚手のもの。できれば耐切創(たいてっそう)性があるもの。
  4. 「ヘルメット」:上から落ちてくる破片や工具から頭を守るために必須。
  5. 「耳栓」または「イヤーマフ」:騒音対策に。
  6. 「足場板」や「はしご」:高所作業用。転落防止措置も検討する。
  7. 「バール」:モルタルの隙間をこじ開けたり、下地材をはがすのに便利。
  8. 「ハンマー(大・小)」:解体作業全般に使う。
  9. 「チゼル(タガネ)」:モルタルを細かくはつるときに使用。
  10. 「セーバーソー」または「電動丸ノコ」(木摺りを切断する場合に使用)。
  11. 「電動ハンマードリル(通称SDSハンマー)」:広範囲に効率よくモルタルを剥がしたい場合に便利。
  12. 「グラインダー」:モルタルと木部の境目を切り込みたい場合に。
  13. 「ブルーシート」や「養生シート」:周囲の保護や廃材の飛散防止に。
  14. 「廃材用コンテナ袋」:解体したモルタルを集めるのに便利。

特に「粉じん対策」は重要です。モルタル破片やセメント粉は非常に細かく、長時間吸い込むと呼吸器に悪影響を及ぼす可能性があります。解体の作業時間が長くなるほど健康リスクが高まるので、「防塵マスク」やこまめな換気、散水(ホコリを抑えるために軽く水をまく)を取り入れてください。


安全上・構造上の注意点(工学的観点含む)

粉じん暴露と健康リスク

前述したとおり、モルタル破片や粉じんを吸い込むと呼吸器疾患のリスクがあります。特に長期間・大量に吸い込むと、将来的に肺へのダメージが発症する可能性があるため、面倒でもマスクと換気は徹底しましょう。また、作業後はしっかりうがい・洗顔・シャワーを行い、衣類についた粉じんもしっかり落とすことをおすすめします。

耐力壁と筋交いの確認

モルタル外壁の下には「木摺り」や「ラス網(ラス)」がある場合がほとんどです。ラス網の下地には筋交いが入っていることがあります。筋交いは木造住宅の耐力を確保するうえで重要なので、筋交いが露出してきたら、むやみに切断しないように要注意です。どうしても撤去が必要な場合は、別の耐力壁で補強するなどの工学的対策(壁量計算を行いバランスを取る)が必要です。建築基準法上、2階建て木造住宅の場合は「壁量規定」を満たす必要があります(床面積や地震地域係数、壁の種類によって計算)。素人でも簡易的に「耐力壁量計算ツール」を使いながら、専門家に確認することが望ましいです。

建物の高さと足場

2階部分のモルタルを剥がすとなると、高所作業が発生します。DIYでの高所作業は危険度が高く、足場の不備により落下事故が発生する可能性もあります。プロは「単管足場」や「ビケ足場」などを組み、しっかり安全帯やネットを活用しますが、素人はそこまで大掛かりな仮設工事はしないことも多いです。もし梯子(はしご)や脚立のみで作業するなら、転倒防止に十分気を配ってください。無理な姿勢でハンマーを振り下ろすとバランスを崩しやすいので、できるだけ平坦な足場を確保し、人に支えてもらうなど万全の態勢を。

騒音と振動

モルタルを解体するときの騒音は大きくなりやすいです。特に電動ハンマードリルやグラインダーを使用すると、騒音レベルは90dBを超えることもあります(電車の走行音レベル)。近所への配慮として、「作業時間帯は午前8時~午後5時に限定する」「事前に近隣に挨拶して理解を得ておく」などのマナーを守りましょう。


解体工法の種類と選定基準

モルタル外壁解体の方法はいくつかあります。ここでは代表的な工法を3種類紹介し、それぞれの特徴と選定基準を挙げてみます。

1. 手作業によるハンマー&チゼル(タガネ)はつり工法

「体力はあるけど電動工具がない方」や「細かいところを慎重に外したい方」に向いています。手作業なので騒音と振動は電動工具よりも少ないですが、時間と労力がかかります。

  • 【メリット】
    ・構造を壊さないよう慎重に作業しやすい
    ・機材コストが安い
    ・粉じんが少し抑えやすい
  • 【デメリット】
    ・作業時間が長い
    ・広範囲を解体すると体力的負担が大きい

2. 電動ハンマードリル(SDSハンマー)を使ったはつり工法

モルタルの解体を大幅に効率化できます。広範囲の解体を素早く終わらせたい場合におすすめです。ただし騒音・振動が大きく、注意が必要です。また扱いに慣れていないと、下地材や筋交いを傷つけてしまうリスクもあります。

  • 【メリット】
    ・解体スピードが速い
    ・労力の軽減
  • 【デメリット】
    ・騒音と振動が大きい
    ・周辺への粉じん飛散が大きくなる
    ・機材に慣れるのにコツがいる

3. グラインダーやセーバーソーを併用した切断工法

モルタル壁を大きなパネル状にカットして、まとめて剥がす方法です。最初にグラインダーなどで壁に切れ目を入れてから、バールなどで剥ぎ取ることで比較的速く、整然と作業できます。ただし切断時の粉じんと騒音が非常に大きいので、環境対策を万全にしなければなりません。

  • 【メリット】
    ・まとめて外せるので作業効率が高い
    ・きれいに解体しやすい
  • 【デメリット】
    ・高価な切断刃が必要になる場合がある
    ・騒音・粉じんが非常に大きい
    ・扱いを誤ると危険(キックバックなど)

選定基準

  • 解体面積が小さく、時間に余裕があるなら「手作業(ハンマー&チゼル)」を選ぶ
  • 解体面積が大きく、短時間で終わらせたい場合は「電動ハンマードリル」
  • 面を大きくきれいにカットしながら剥がしたいなら「グラインダーやセーバーソー」で切断しつつ剥離

実際には、これらの工法を組み合わせる場合が多いです。最初にグラインダーで切り目を入れ、電動ハンマードリルでガンガンはつる。細かいところはチゼルで微調整するなど、現場の状況に合わせて臨機応変に進めましょう。


ステップバイステップの解体手順

ここからは、代表的な「電動ハンマードリル(SDSハンマー)+手作業」の組み合わせを例に、ステップバイステップで解体する流れを紹介します。もちろん、他の工法でも基本の流れは似ていますので、適宜読み替えてください。

  1. 「準備と養生」
    • 解体範囲の周囲をブルーシートや養生シートで覆います。
    • 窓やドアがある場合はビニールシートや養生テープで目張りし、粉じんが家の中に入らないようにしましょう。
    • 近隣の住宅や車がある場合は、飛散物対策にネットやシートを張ることも検討してください。
  2. 「壁面の下調べ」
    • 解体面の裏側に重要な配管・電気配線・ガス管が通っていないかをチェック。下地探しセンサーや図面を参照し、慎重に確認してください。
    • 筋交いや柱・梁などの構造材の位置を把握。そこにはつりを入れる際は特に気を付けます。
  3. 「切れ目を入れる」
    • グラインダーを使用する場合は、解体する範囲の外周に2~3cm深さの切れ目を入れると、きれいにはがしやすくなります。
    • このとき粉じんが大量に出るので、水を霧吹きするなどして飛散を抑えましょう。
  4. 「電動ハンマードリル(SDSハンマー)でモルタルをはつる」
    • チゼルビットを装着し、モルタルと木摺りの間に角度をつけながら当てていきます。
    • 一気に深く入れすぎると下地材を破損しやすいので、角度を調整しながら徐々にはがしていきましょう。
    • もし筋交いが露出してきたら、そこから先は手作業に切り替えて慎重に対応します。
  5. 「下地材(木摺り・ラス網)の撤去」
    • モルタルをはつった後、ラス網や木摺りが表面に残ります。釘やステープルで固定されている場合はバールや釘抜きで外してください。
    • 木摺りごと全て撤去するなら、セーバーソーや丸ノコである程度のサイズに切りながら剥がしていくと効率的です。
  6. 「細部の仕上げ・清掃」
    • どうしてもモルタル片が残っている部分は、ハンマー&チゼルで地道にはつります。
    • 作業エリア全体を掃除し、廃材を指定の場所に集めます。
  7. 「廃材の処分」
    • 自治体の規定に従い産業廃棄物(モルタルくず)として処分する必要があります。
    • 少量なら自治体のごみ処理施設へ直接持ち込むか、建築廃材を引き取ってくれる業者に依頼しましょう。
    • 大量の場合は産廃処理業者に依頼する方が結果的に安く安全に処分できることがあります。
  8. 「必要に応じた補強や新たな外壁工事へ」
    • モルタル外壁を剥がして下地がむき出しになった状態で、新しい外装材を取り付ける前に、筋交いの補強や防水シートの貼り替えなど必要な処置を行いましょう。
    • 特に耐震補強をするのであれば、構造用合板(厚み9mm以上の耐力面材)を張るなどの工法があり、ビスピッチ(釘・ビスを打つ間隔)はおよそ150mm以下など、建築基準法やメーカー仕様に沿って行うのが一般的です。

解体後の廃材処分とリサイクル

廃材の分類

モルタルくずは産業廃棄物に該当し、自治体によっては「がれき類」と分類されます。木摺りやラス網なども建築廃材として扱われるので、地域の条例に従って処分方法を確認してください。廃材の分類をしっかりしておかないと、処分費用が高くなることがあるので要注意です。

リサイクルの可能性

コンクリートやモルタルは、リサイクル施設で砕いて路盤材などに再利用されるケースがあります。大量に出る場合は専門のリサイクル業者に相談し、一括で引き取ってもらうとスムーズです。


海外事例:2×4工法や他の素材への転用

日本の在来工法(木造軸組工法)のモルタル外壁解体に加えて、海外では2×4工法の住宅でも類似の作業があります。海外では特に石膏ボードの外装やスタッコ(モルタルの一種)を用いることが多く、電動ハンマードリルでスタッコを剥がしてから、耐力壁としての合板・OSBを露出させるという点で似ています。防水シートやベーパーシール(防湿層)を同時に交換するケースもあります。日本の在来工法と同じ要領で解体できる場合が多いですが、ツーバイフォーは構造壁が多いため、撤去範囲が広いと構造計算が必要になるのは日本同様です。海外工法にチャレンジする方も、「どの部分が耐力壁か」をしっかり把握することが重要です。


よくある質問(Q&A)

Q: 「アスベストが含まれているかどうか、素人でも簡単にわかりますか?」
A: 残念ながら難しいです。専門の分析機関に依頼して試料を送付し、顕微鏡で繊維の種類を判定する検査が必要です。

Q: 「モルタルの厚みがバラバラで苦労しています。どうすればよいですか?」
A: 築年数が古いと職人の手塗りで仕上げられたケースもあり、厚みが不均一なことがあります。最初にグラインダーやチゼルではがし始めて、適度に切れ目を入れる位置を調整すると作業しやすいです。

Q: 「素人でもできる補強工法ってあるんですか?」
A: 代表的なのは「構造用合板を張る」「筋交いを追加する」などですが、どちらも壁量計算が伴うので建築士や耐震診断士に相談するのがおすすめです。


まとめ

ここまで、モルタル外壁解体の注意点や必要な道具、具体的な工法とステップバイステップの手順、廃材処分など幅広い内容を紹介してきました。DIYで解体を行うメリットは「コスト削減」と「自分で家づくりに携わる楽しさ」が挙げられますが、安全対策や近隣配慮を怠るとトラブルに発展するリスクがあります。さらに、耐力壁を誤って撤去してしまうと耐震性能が低下し、万が一のときに建物が大きく損傷する恐れもあります。

「解体する壁が耐力壁にあたらないかどうか?」は最重要事項です。構造体を傷つける可能性がある場所の解体を行う場合は、必ず専門家や建築士に相談しましょう。また、アスベストなど有害物質のリスクがある場合は、無理をせずプロに任せるのが賢明です。

それでもDIYで対応できる範囲のモルタル外壁解体は、手間と時間はかかるものの、達成感もひとしおです。この記事を参考に、十分な安全管理と計画のもとで是非挑戦してみてください。

関連参考動画

下記は、本記事関連テーマを調査するにあたり大変参考にさせていただいた動画です!(敬称略)

「モルタル外壁の構造について」テイガク

a,「ひび割れモルタル外壁をDIYでサイディングに(解体、合板貼り編) Change the cracked outer wall to siding with DIY -demolition-」



以上です。かなり長文になりましたが、少しでもセルフリノベーションのお役に立てれば幸いです。作業の際は安全第一で、ルールとマナーを守って素敵なリノベーションライフをお送りください。何か疑問や不安があれば、ぜひ専門家に相談しながら進めましょう。応援しています!

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