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DIYでできる木造住宅の柱交換・柱補強ガイド
みなさんこんにちは、DIY Renovaです。
日本の木造住宅は、古くなるほど柱の傷みが顕在化することが多くなります。特に古民家などは建築時期や使用材によっては、柱がシロアリや腐朽の被害を受けやすいものです。そこで本記事では、DIYが好きな方や古民家再生に興味のある方でも取り組みやすい「柱の補強」「柱の取り替え(差し替え)」を中心に解説します。想定するのは日本の最大2階建て木造住宅です。安全面を第一に考慮しつつ、工学的な定量観点も交えて詳しく説明しますので、この文章を読めば「どういった道具を揃え、どんな手順で作業すればよいか」が分かるはずです。
以下の内容では、初心者の方が迷わないよう「抱き柱(添え柱)工法」「柱の根継ぎ工法」「柱差し替え工法」という3つの代表的な方法に分けてステップバイステップで紹介します。さらにジャッキの選び方や安全対策、DIYでは対応が難しい場合の判断基準などもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
それでは、どうぞ。
はじめに押さえておきたい木造住宅の柱の基礎知識
木造在来工法の住宅では、柱が大きく「通し柱」と「管柱」に分かれます。
- 通し柱: 1階の土台から2階の軒桁・屋根付近まで貫通している柱
- 管柱: 1階と2階で分割されており、それぞれの階で土台・梁・桁に固定されている柱
古い住宅では通し柱が「四隅」など建物を大きく支える重要な位置に入っていることが多いです。通し柱は一般的に断面12cm角(4寸角)程度、管柱は10.5cm角(3.5寸角)程度が標準とされています。もちろん住宅によって寸法は前後しますが、これら寸法や柱の状態を把握しておくと、後述する交換や補強の方法選定がしやすくなります。
柱は縦方向に大きな荷重(屋根や2階部分の重み)を負担しているのが特徴です。そのため、柱を補強・交換する際には「どうやってその荷重を一時的に逃がすのか(ジャッキアップなど)」「柱を切断したり継ぎ足したりするときの安全性」をしっかり考慮しなければいけません。構造材の扱いを誤ると、家全体の歪みや沈下につながる恐れがあるためです。
詳しい柱の種類に関しては、別途こちらの記事でまとめていますので関心のある方は見てみてください!
DIYで柱を扱う上で必要な道具と安全上の注意
作業の手順に入る前に、準備すべき道具や安全対策を確認しましょう。
主な工具・材料
- 油圧ジャッキまたは機械式ジャーナルジャッキ
- 油圧ジャッキ: 比較的入手しやすく、ボトルジャッキとも呼ばれるもの。コンパクトで操作が簡単。ただし油のにじみ等で長時間の荷重保持に不安がある。
- ジャーナルジャッキ: スクリューや歯車を回して上下させる機械式ジャッキ。自動降下しないため、長期間安定して荷重を支えられる。DIYで入手困難な場合はレンタルを検討する価値がある。
ジャッキについては、別途こちらの記事で選び方についての案をまとめた内容を書いています!
- 仮柱となる木材やツッパリ、当て木
- 柱を外す・補強する間に荷重を支えるための部材。床と梁・桁の間に立てて使う。十分な太さ(例: 90×90mmや105×105mm)で反りの少ない角材がおすすめ。
- 新設用の木材
- 交換や補強に用いる柱材。既存柱と同寸法か、あるいはそれ以上の断面寸法の角材を用意する。構造用の乾燥材が望ましい。
- 工具類
- ノコギリ、電動丸ノコ、レシプロソー(解体用)、ハンマー、ノミ、ドリルドライバー、長めの木工用ドリルビットなど。
- 金物類: 柱と土台・梁を結合するためのコーナー金具やプレート金物、コーチスクリュー、全ネジボルト+ナット+ワッシャー等。
- 測定用具・補助具
- メジャー、差し金、レーザー水平器や下げ振り(柱の垂直を測るため)、クランプ。
- 安全保護具
- ヘルメット、保護メガネ、作業用手袋、マスクなど。特にジャッキアップ作業中の落下や木くずの飛散には注意すること。
作業前の安全対策
- 「どの柱を」「どこまで」補強・交換するのか、全体像を明確にする。
- 通し柱を扱うのか、管柱を扱うのか、腐朽度合いはどこまで進んでいるのか。
- 予算や工期、リフォーム全体の方針との兼ね合いを考える。
- 床や壁を必要な範囲で撤去し、柱が見える状態にする。
- 内壁・土壁などをはがして柱や土台、梁との接合部を露出させる。
- 仮支えを設定し、柱にかかる荷重を一時的に逃がす。
- これが最も重要な作業。ジャッキを据え付ける床下部分は補強板を敷くなどして沈み込みを防止。
- ジャッキを上げながら、仮柱が梁や桁にピタリと当たるよう微調整。急に持ち上げず、少しずつ上げて柱がわずかに浮く程度でOK。
- 作業中は常に「もしジャッキや支えが外れたらどうなるか」を想定し、二重三重のバックアップを取る。
以上の準備を終えてから、実際の補強・交換作業に着手してください。では次に、代表的な工法を3つ紹介します。
1. 抱き柱(添え柱)工法

「抱き柱工法」は、既存柱を撤去せず、横に新しい柱を並行して添え、両者をボルトなどで締結し一体化する方法です。
特徴
- 柱が部分的に腐食している、あるいはひび割れが生じて強度が不安になった場合などに有効。
- 柱を全部外さないため、建物への影響が比較的少ない。
- DIY初心者にとってもチャレンジしやすく、安全リスクが低め。
作業ステップ
- 柱面の露出と掃除
- 壁材や仕上げ材を取り除き、既存柱の側面がむき出しの状態にする。
- 欠けやささくれはノミやヤスリでならしておき、添え柱が密着しやすいよう表面を整える。
- 新設柱の加工
- 既存柱の高さ・取り付け位置を測り、新しい角材を必要寸法にカット。
- 場合によっては梁や桁との取り合い部分を少し欠き込む。
- 仮付け・位置合わせ
- ジャッキで荷重を逃がした状態で、既存柱に新しい柱を並行に密着させる。
- クランプなどで仮固定し、下げ振りや水平器で垂直が出ているか確認。
- 一体化のための締結
- 柱同士をボルトで貫通させる場合、ドリルで上下2~3箇所穴を開ける。
- ボルトにワッシャーとナットをかませ、しっかり締め付ける。
- コーチスクリューやラグボルトを斜めに打ち込み締め付ける方法もある。
- 上端・下端の固定
- 添え柱の上端は梁や桁、下端は土台や基礎に接合。金物プレートやコーナー金物でしっかり留める。
- 最後にジャッキをゆっくり緩め、荷重が添え柱も含めて支えられる状態にする。
注意点
- 既存柱があまりにも脆くなっている場合、抱き合わせだけでは十分な強度が得られないケースもある。
- 新旧の木材の乾燥度合いが異なる場合、後から隙間が生じないよう定期的な増し締めが望ましい。
- 費用目安は、新規柱材と金物類のみで済むなら数万円程度。
2. 根継ぎ工法
「根継ぎ」は、柱の下部(根元)だけが腐朽などで傷んでいる際、傷んだ部分を切り落として新しい材を継ぎ足す方法です。シロアリ被害などで柱脚がボロボロな場合によく行われます。
特徴
- 下端のみ切り替えるので、大掛かりに柱全体を交換する必要はない。
- ただし仕口(しぐち)加工や金物補強が必要になり、DIY難易度はやや高め。
作業ステップ
- 切断ラインの決定
- 腐食がどこまで進んでいるかを見極める。例えば根元から30cmがダメになっていれば、さらに上部の健全な部分まで含めて50cmや60cmの高さで切断ラインを設定。
- 切り離し
- ジャッキで荷重を抜いた状態で、ノコギリやレシプロソーなどを使い、水平になるよう柱をカット。
- 下端部分を撤去し、柱の切断面をノミやヤスリで平滑に整える。
- 新材の用意・仕口または金物で接合
- 切り落とした分と同寸法、またはそれより少し長めに新しい柱材をカット。
- 伝統的には継ぎ手加工をするが、DIYの場合は突き合わせ+金物プレート・添え板で補強する方法が現実的。
- 両側や四方から厚みのある添え木・金具を当て、ボルトやコーチスクリューで固定。
- ジャッキの解放と仕上げ
- 新旧の柱脚が一体化していることを確認し、ゆっくりジャッキを下ろして荷重を元に戻す。
- 必要に応じて防腐剤や防蟻処理を行い、床や壁を復旧する。
注意点
- 柱の下部だけの問題なら有効だが、柱全体がダメージを受けている場合は根継ぎでは対処しきれない。
- 仕口が弱いと建物の振動で継ぎ目から折れるリスクがある。念には念を入れて補強を行うこと。
- 作業姿勢が苦しい(床下近くでの作業)ため、無理な姿勢を避ける工夫が大切。
3. 柱の差し替え(全体交換)

「柱差し替え」は、既存の柱をまるごと撤去して新しい柱を取り付ける方法です。DIYでは最も難易度が高く、作業リスクも大きいため、慎重に判断する必要があります。
特徴
- 柱が全長にわたって重大な腐朽・破断がある場合や、リフォームで間取り変更をするため柱を完全に除去したい場合に検討される。
- 通し柱や建物四隅の重要な柱を扱うときは、専門家の助言を強く推奨。
作業ステップ
- 既存柱の撤去
- 十分な仮支えをしてから、梁や土台との接合部を切断。
- 柱を上下に分割して少しずつ抜き取ると安全度が高い。
- 新設柱の加工
- 元の柱と同じ長さ・断面寸法の材を用意。仕口を再現できれば理想的だが、DIYでは金物を用いた接合が多い。
- 柱受け金物などを活用する場合は、柱の上下端部を金具に合わせて削ることもある。
- 柱の建て込み・固定
- ジャッキアップで梁や桁を数ミリ浮かせ、その隙間に新柱を立てる。
- コーナー金物やプレート、ボルトなどで梁・土台としっかり接合。
- ジャッキをゆっくり下ろし、新柱が荷重を負担する状態を確認。
- 周辺部の補強・耐力チェック
- 柱を抜いたことで耐力壁が足りなくなる場合は、筋交いを新設するなど構造的な補強を検討する。
注意点
- 隅柱や通し柱を簡単に抜くと、建物全体の荷重バランスが崩れる恐れがある。
- 大きな開口を設けるなど構造的変更を伴うと、建築確認申請や耐震診断が必要になるケースもある。
- DIY可能か否かの見極めが非常に重要で、場合によっては専門業者へ依頼した方が安全かつ結果的にコストも抑えられることがある。
【特殊ケース】半分だけ存在する横架材の上に管柱がある場合の対応
補強や交換対象の柱の中には、「柱の真下にあるはずの横架材(土台や梁など)が途中で途切れている」という、構造的に不安定なケースもあります。たとえば、浴室など増改築が繰り返されたエリアでは、半分しか存在しない横材の上に管柱が直接乗っているというような場面が見られます。
このような場合、そのまま柱をジャッキアップしようとすると、荷重が逃げ場を失って構造が破損したり、柱が持ち上がらなかったりするリスクが高くなります。
そこで有効なのが、「仮の横受け材を新たに設置し、その横材を含めてジャッキアップする」という方法です。
■ 作業ステップ(要2名以上の作業推奨)
- “受け材”の設置
- 半分しかない既存の横架材の下に、120×45mmや90×90mmの構造用角材を横向きに渡します。
- 両端がしっかり受けられるよう、束石や支柱などで支えを確保します。
- 2点ジャッキアップ
- 1つは管柱の直下に(本命)
- もう1つは新たに通した“横受け材”の下に設置し、セットで荷重を受ける構えにします。
- ※ ジャッキは「垂直方向」に荷重をかけるのが鉄則。横から斜めに支えるのはNGです。
- 仮支柱の設置
- ジャッキアップ後、柱と梁の間に90×90mm以上の仮柱を設置し、安全を確保。
- ジャッキが抜けても問題ないように、仮支柱は構造用合板や斜め材で補強しておきます。
- 交換・補強作業へ
- 管柱がわずかに浮いた状態で、柱材の加工・差し替えを行います。
- 新しい柱の脚元は、ケミカルアンカー+ホールダウン金物などで基礎としっかり緊結。
- ジャッキを慎重に解除
- ゆっくり荷重を戻し、柱全体が荷重を安全に支えられているか確認します。
■ 注意点
- 作業中、梁や桁が予想以上に変形・たわみを起こす可能性があるため、常に音や動きに注意を払いながら作業を進めましょう。
- 仮支柱や受け材は最終的にそのまま補強部材として残す判断もありです。
- 斜め方向からの支え(側面からのジャッキアップ)は危険なので避けてください。
このような特殊ケースは、見た目以上に構造的なリスクが潜んでいることが多いため、判断に迷ったら経験のあるプロに一度見てもらうことをおすすめします。DIYでは安全対策を最優先に、支え・持ち上げ・補強の3点セットを意識して臨みましょう。
油圧ジャッキとジャーナルジャッキの比較
柱の補強や交換で欠かせないのが「ジャッキアップ」です。ジャッキは荷重を仮支えしながら柱を切り替えたり継ぎ足したりするために不可欠の道具ですが、大きく分けて「油圧式」と「機械式(ジャーナル式)」があります。
- 油圧式: 車のタイヤ交換などでも使うボトルジャッキが代表格。小型でパワーがあり、比較的入手しやすい。長時間の保持はオイルにじみ等で安定性が若干劣る可能性があるため、持ち上げた後はウマや仮柱で支えることが重要。
- ジャーナル式: 歯車やネジで上下させる機械式ジャッキ。自動降下しないため、長期的に固定する現場向き。DIYではあまり出回っていないが、レンタル会社で借りられるケースもある。操作に手間がかかる一方、安全性は高い。
作業期間や目的に応じて使い分けましょう。たとえば油圧ジャッキで持ち上げつつ、すぐに仮柱で固定するならそれで十分対応できる場合が多いです。数日間ジャッキアップしたまま作業する必要があるなら、ジャーナルジャッキを検討するのも良いです。
DIYで行える範囲と専門業者に依頼すべきケース
木造住宅の柱補強や交換は、構造に直接関わる大きな作業です。素人がむやみに手を出すと、取り返しのつかない状態になる恐れもあります。よって「DIYでできる範囲」と「プロに任せるべきケース」を把握しておきましょう。
DIYで可能な範囲
- 1階の管柱など、構造上重要度がやや低いとされる柱の補強。
- 腐朽が軽度か中程度で、抱き柱工法で十分対応できる場合。
- 柱脚だけを根継ぎすれば解決できる小規模の腐食。
- 既にDIYで内装解体済みであり、梁や土台が露出していてジャッキをかけやすい状態。
- 作業者がノコギリや電動工具、ボルト締結などの扱いにある程度慣れており、安全対策をしっかり理解している場合。
専門業者に依頼すべきケース
- 通し柱や隅柱、建物の中心となる大黒柱を抜く・交換する必要がある。
- 家全体の耐震補強や大幅な間取り変更で、壁や筋交いの配置を大きく変える。
- 土台や基礎レベルでシロアリ被害・腐朽が進み、柱だけの問題ではない。
- 建物が傾斜しているなど複合的な問題があり、曳家や大掛かりなジャッキアップが必要。
- 作業自体に強い不安がある、あるいは手を付け始めたが難しくて続行できない状況に陥った。
安全確保や時間短縮のため、予算に余裕があればプロに任せるメリットは大きいです。DIYでやるなら、少なくとも「ジャッキアップや荷重移動の仕組みを正しく理解する」「自力作業で困ったらプロに相談する」という姿勢を忘れないようにしてください。
事故を防ぐためのポイント
- 作業開始前の段取りをしっかり立てる。「柱をどう補強するか」「どこを切るか」を紙に書き、手順をイメージ。
- ジャッキアップは少しずつ行い、一度に大きく持ち上げない。きしみや変形が起きたらすぐ作業を止めて原因を確認。
- 柱を切り離す瞬間は最も危険なので、一人だけでなく複数人で声を掛け合う。
- 万一に備え、支えが抜けても挟まれないよう退避経路を確保。特に上方から落下物がないか注意する。
- 安全保護具(ヘルメット、保護メガネ、手袋、マスクなど)を必ず着用する。
- 疲労で判断力が落ちると事故リスクが高まるので、定期的に休憩をとる。
木造住宅の柱補強や交換は、古くから大工さんの世界で積み上げられてきた知恵と技術が詰まっています。DIYで取り組む意義は大きいですが、リスク管理も同じくらい大切です。
まとめ
木造住宅、とりわけ古民家のように築年数が経過した建物では、柱の劣化は避けられない課題です。大掛かりなリフォームをする前に、「添え柱(抱き柱)」「根継ぎ」「差し替え」という三つの工法を知っているだけでも、かなり柔軟な対応が可能になります。DIY好きの方でも、きちんと手順と安全対策を踏まえれば柱の部分的な補強は十分行えますし、その結果、家を長持ちさせることができます。
ただし、柱は建物の骨格ですから、交換や補強は慎重に進めるのが鉄則です。特に通し柱や隅柱など、構造の要になる部材を扱う場合は、専門家のアドバイスを受けることを強く推奨します。最終的には「安全第一」で、不明点があれば無理をせずプロに相談しながらリフォームを進めましょう。
このガイドが、あなたの住まいをより良い状態に蘇らせる一助になれば幸いです。
そもそも自分の家のリノベーション・リフォームってどこまでやっていいの?どこから始めればいいの?というかたはこちらから。具体的なリフォームの工程や施工などについて知りたい方はこちらのページも是非ご覧ください!
参考文献
[1] 大工マニュアル (2021) 「リフォームでの柱&土台の取り換え【大工仕事解説】手順や注意点」, YouTube
[2] daiku-manual (2021) 「古民家の通し柱取り換え事例」, YouTube
[3] 「DIYリフォームで床の間柱を撤去・柱補強した事例」, ブログ『一戸建てリフォームDIYスタイル』, 2020年
[4] 「耐震改修のための木造住宅構造補強マニュアル」, 行政刊行物
[5] 建築基準法施行令 (令和版) 「木造住宅の通し柱・管柱に関する規定・断面寸法について」
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