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金属屋根向け遮音機能を取り入れるための工夫(DIYセルフリノベ完全版・選択肢カタログ)
「雨音がカンカン響く」「夏の小屋裏が暑い」を、DIYでもできる範囲で確実に改善したい人のための実践記事です。
はじめに:なぜ金属屋根は「うるさく・暑く」なるのか(理屈の最小限)
雨粒が薄い金属板を叩くと板が振動し、その振動が空気に音として放射されます。単板の遮音は概ね「質量則」に従い、面密度(重さ)が大きいほど、また周波数が高いほど、透過損失は大きくなります(日本音響材料協会の技術資料が基礎を整理)。さらに板の固有の屈曲波と音速が一致する周波数で遮音が落ちる「コインシデンス効果」もあります。したがって「質量を増やす」「制振して鳴りを抑える」「多層化して空気層・通気を入れる」の合わせ技が効きます。
体感面では「音圧レベルが約10dB下がると、ささやき→半分くらいに感じる」という聴感の目安が知られています(1kHz周辺のソーン尺度の関係)。選択肢比較の指標に使えます。
このページの使い方(決め方の早見)
- 「外側で静かにする」か「内側で受け止める」か。
- 重量・予算・納まり(ビス長・役物高さ)の制約を確認。
- 期待する効果(dBの目安、夏の温熱)と工期・難度のバランスを取る。
- 雨仕舞と通気・換気の基本ルール(屋根通気層は30mm以上が標準)を守る。
選択肢一覧(特徴と向き・不向き)

選択肢A:一体断熱の金属屋根材に葺き替える(例:スーパーガルテクト、横暖ルーフ)
「鋼板+硬質断熱フォーム」が工場一体化した屋根材は、板の「鳴り」を断熱材が受け止め、雨音を大きく抑えます。メーカーの実験では「豪雨でも室内はささやき声程度」という趣旨の提示があります(断熱材一体成形の効果)。
向く人=「屋根材自体を更新して静音も断熱も一挙に取りたい」「外観も刷新したい」。
向かない人=「既存板金は残したい」「最小限の工事で済ませたい」。複合素材のものということもあり解体費用がすごいことになり大変なので避けたい方。
想定製品:
・アイジー工業「スーパーガルテクト(IGルーフ)」系(断熱材一体、遮音・遮熱の解説あり)。
・ニチハ「横暖ルーフ」系(硬質ウレタンフォーム一体で雨音を軽減、飛び火性能試験合格の記述あり)。
選択肢B:石粒付き金属屋根(自然石粒チップ)に替える
表面の自然石粒が雨滴を拡散させ、共鳴を抑えることで「金属屋根なのに静か」を実現するタイプ。各社リーフレット・施工店記事で「雨音の拡散・吸収」の言及が見られます。
想定製品:
・「ディプロマットスター」「ディーズルーフィング」など。
向く人=「外観に石粒の質感」「対候・遮熱・静音をパッケージで」。
注意点=通常の鋼板よりやや重量増(といっても瓦よりずっと軽量)。
「ディプロマットスター」はどこの国で使われているのか?
1. アメリカ(カリフォルニア発)
- 「ディプロマットスター」は、アメリカ・カリフォルニアの株式会社ディートレーディングが製造しており、日本でも「ディーズルーフィング」ブランドで1998年から輸入販売されています。
- 製造開始からすでに40年以上の歴史があり、世界70か国以上で採用されている実績があります。
2. 世界各地(欧米、北欧、東南アジア、オセアニア、アフリカ)
- 石粒付き金属屋根材は、欧米だけでなく北欧や東南アジア、アフリカ、オセアニアでも使用されていることが紹介されています。wealthcheer.com+5yokohama-yane.com+5arise1.jp+5
3. その他のブランド・国際メーカー
- イギリス発祥のストーンチップ金属屋根は戦後に開発され、ニュージーランドAHI Roofing(現 RoofTG)が製造・販売を世界80か国以上で展開しています。ブランドとしては「Decra」「Gerrard」「ROOFKO」などが有名です。
- つまり、日本で馴染みは薄くても、世界的にはかなり普及している技術・方式です。
選択肢C:野地の上に木質ボード(ビルボード等)を挟む
野地合板の上に「木質繊維ボード」を敷いてからルーフィング→通気→金属屋根。板の質量追加+内部摩擦(制振)で高音のカンカン音を和らげ、木質の熱抵抗で夏の熱もにぶらせます。大建工業「ビルボード」は屋根下地用途として明示され、厚さ9mm/12mmがあり、メーカーは12mmのほうが遮音・断熱で優れる旨を案内しています(仕様・特長ページ)。
向く人=「既存の板金は張り替える計画だが、下地で静音・断熱を底上げしたい」。
注意点=重量は少し増える。厚み分、ビス長や役物高さの納まり確認が必要。
「アフィリエイト挿入ポイント」:ビルボード 9mm/12mm/対応ビス/遮熱ルーフィング。
選択肢D:金属板の「裏」に制振テープ/シートを帯貼り(部分貼り)
板そのものの「鳴り」を止める直球策。屋根材の働き幅に対して「約30%を帯状に貼る」やり方で、技術資料に「雨音騒音10dB低減」と示す製品があります(ゼトロ NV-αⅡの公開PDF)。
同系のポリオレフィン系防振シート(ビブレス ルーフシート)もあり、屋根板の裏に一部貼る前提で耐久性・施工性をうたいます。
向く人=「現行の屋根材を活かしつつ手を入れたい」「重量増・厚み増を最小に」。
注意点=面積あたり価格はやや高めになりやすい/貼る手間がある。
選択肢E:室内側で仕上げる(吸音・遮音・質量の付加)
外皮で取り切れない分を、室内側でロックウール充填、気流止めの徹底、天井石膏ボード二重、防振吊木などで受け止める。音響の基礎では「重く・多層・隙間なし」が遮音の鉄則で、吸音材は室内側の残響低減に効きます(基礎資料参照)。
向く人=「屋外作業を最小化」「予算を抑えたい」「天井リフォームと同時に進める」。
注意点=屋根自体の雨音は減るが、外皮側対策より効果はやや限定的。
どれを選ぶ?(目的・制約別の推奨組み合わせ)
- 「最短で体感を大きく変えたい」
→ 選択肢A(断熱一体屋根材) or B(石粒付き)+選択肢G(通気・換気の最適化)。
根拠:断熱材一体や表面石粒で雨音を拡散・吸収。メーカー実験で「ささやき声程度」の提示。 - 「既存の屋根形状はそのまま・納まり優先」
→ 選択肢C(ビルボード)+ルーフィング+G(通気)
根拠:屋根下地で質量・制振・熱抵抗を付加し、ルーフィングで一次防水と遮音寄与。 - 「重量とビス長に余裕がない」
→ 選択肢D(制振テープ帯貼り:働き幅30%)+G(通気)
根拠:0.55mm級の制振テープで10dB低減の資料。 - 「室内作業で完結したい」
→ 選択肢F(天井側)+G(小屋裏換気の見直し)
必ず押さえる共通ルール:通気・換気・防火
屋根通気層は「30mm以上を標準」とする考え方が公的な設計・施工テキストに明記されています(断熱層外側に通気層を必ず設ける)。小屋裏換気は、軒裏吸気・棟排気など形式ごとの「有効開口面積の目安」を守ると失敗が減ります(例:棟排気・軒吸気のとき1/900などの整理を参照)。
準防火地域・法22条区域では、屋根材や換気部材の認定適合も要確認です(横暖ルーフの飛び火性能試験合格の案内など)。
施工の実践:工法別の「素材レベル」ステップ・数量の弾き方
以下はDIY前提の標準フローです。安全(フルハーネス・親綱)と天候(連続施工でルーフィングまで一気に)をまず確保してください。
工法A:断熱一体の金属屋根材に葺き替え(スーパーガルテクト・横暖ルーフ等)
- 事前調査
「屋根面積A」「流れ長さL」「軒先長さW」「屋根勾配」を実測。既存野地の腐朽・撓み・雨染みの有無を確認。 - 撤去(葺き替え)
取り外し順は「ケラバ→棟包み→唐草→本体→谷」。釘・ビスはマグネットトレーに回収。下地露出後に清掃。 - 下地補修
腐朽合板を切り回しで差替え、根太・垂木に効かせてビス留め。不陸はパテや薄ベニヤで調整。 - 下葺き(ルーフィング)
「軒先先張り→上へ」。重ね幅・立上り・谷部二重・釘穴シール・貫通部のテーピングを仕様どおりに。 - 役物先付け
唐草、谷先張り、各部の見切り。メーカーの納まり図の順番を守る。 - 本体張り
断熱一体パネルを規定ピッチのビス・クリップで固定。働き巾の取り合い・重ね代・端部処理を規定どおりに。 - 棟・ケラバ仕舞い
通気棟と連動する納まりの場合は棟部の連続開口を確保。面戸・防虫部材を忘れないこと。
数量の弾き方:
・屋根材枚数=面積÷1枚当たり働き面積(ロス10%見込)
・ビス長=「胴縁+下地+効かせ深さ」合計で選定
・付属部材=棟長さ・ケラバ高さ・谷長さで算出
→ 各製品の「必要本数早見表」を参照(メーカーサイト)。
「挿入ポイント」:対象屋根材の型式ごとにECリンク(楽天・Yahoo・Amazon)。
工法B:石粒付き金属屋根への更新
ステップは工法Aとほぼ同じ。違いは「屋根材がインターロッキングや専用釘・接着併用」を要求する点。
・谷部は先施工、軒先のスターターや唐草に合う専用品を選択。
・棟・ケラバは石粒層の厚み分の納まりに留意。
効果の根拠(雨音拡散・遮熱)は各社資料の言及を参照。
「挿入ポイント」:ディプロマットスター、ディーズルーフィングの製品ページ・見積りフォーム。
工法C:ビルボード(木質ボード)を野地の上に挟む
- 仮置き計画
「四辺10〜12mmのクリアランス」「レンガ張り状に目地ずらし」。野地の継ぎ目と目地を一致させない。 - 敷き込み
端から通りを出しながら、指定ピッチで釘/ビス留め。印刷面の向きなど指示があれば遵守。 - 下葺き(遮熱ルーフィング推奨)
先張り→本張り。谷二重、重ね幅、立上り、貫通部のシールは規定どおりに。一次防水はルーフィングが主役。 - 通気層形成
縦胴縁18〜30mm以上を軒→棟へ連続。棟で開口を確保し通気棟と連携、軒先には防虫網付き換気材。 - 金属屋根本体
立平・横葺きの仕様に合わせてクリップ・桟の位置を決め施工。
数量の弾き方:
・ビルボード枚数=A(屋根面積)÷1枚面積(910×1820=1.657㎡)×(ロス10%)
・重量差=9mmと12mmで約2kg/㎡程度の差(目安、詳細は製品仕様参照)
・通気胴縁=列数(屋根幅÷ピッチ)×流れ長さ
→ 製品仕様・注意書きは公式ページで確認。
「挿入ポイント」:ビルボード9mm/12mm、遮熱ルーフィング、屋根用コーススレッド、通気棟・軒先換気材。
工法D:制振テープ/防振シートを「帯貼り」
- 寸法計画
屋根材の「働き巾W」、テープ幅w、貼付率r(目安0.3)から本数を算出。
例:W=333mm、w=65mm、r=0.3 → n≈(0.3×333)/65 ≈1.54 →「2本帯」で設計。 - 下準備
裏面をアルコール等で脱脂・乾燥。気温が低い場合は保管状態を室温に。 - 貼り付け
墨出し→気泡を抜きながら圧着ローラーでしごく。端部は角落としで剥がれ防止。 - 干渉確認
クリップ・ビス位置、谷・棟・ケラバの折り込み部に干渉しないように切欠き・逃げを入れる。 - 点検
端末のめくれ・浮きを再圧着。必要に応じて追い貼り。
数量の弾き方:
総延長=(1枚の帯本数n)×(流れ長さL)×(屋根材枚数N)。20m巻の本数に割り返す。
効果の根拠:働き幅30%で雨音騒音10dB低減とする技術資料(ゼトロ NV-αⅡ)。
同系:積水化学「ビブレス ルーフシート」(屋根用防振シート、部分貼りで効果)。
「挿入ポイント」:テープ(45/65/100mm)、圧着ローラー、脱脂剤。
工法E:室内側での静音(天井面の吸音・遮音・気密)
- 天井裏の点検
断熱材の欠落・隙間・気流止め不足を確認し、必要量のロックウールを追加。気流止めを設ける。 - 下地
必要に応じて防振吊木で天井下地を組む。 - 仕上げ
石膏ボード二重(12.5mm×2)+ジョイントシールで面密度を増やし、コーキングで気密。
ダウンライトは気密型、点検口もパッキン付きに交換。
音響の理屈(質量則の基礎)は前掲の資料参照。
「挿入ポイント」:ロックウール、高比重PB、防振金物、気密部材。
通気・換気の実務(数値で迷わない)

・屋根通気層=「30mm以上を標準」。断熱層の外側に必ず通気を設け、入口(軒)から出口(棟)まで滞りなく。
・小屋裏換気=形式ごとの有効開口面積の目安に従う。たとえば「軒裏吸気+棟排気」構成なら、吸気1/900以上、排気1/1600以上の整理など(城東テクノの技術ページ)。製品の「有効換気面積(cm²/本)」から本数を算出できるツールもあり。
「挿入ポイント」:通気棟、軒天換気材、防虫見切り。
具体例:標準的な片流れ・立平(働き巾333mm)/屋根面積70㎡での数量概算
仮定:流れ長さ5.0m、軒先長さ10.0m。
・制振テープ(工法D)
r=0.30、w=65mm → 1枚あたり帯本数≈2本。
屋根材枚数N=軒長10.0m÷0.333m ≈30列。
総延長 ≈ 2本×5m×30列=300m → 20m巻×15巻。
・ビルボード(工法C)
必要枚数 ≈ 70㎡÷1.657㎡/枚 ≈ 43枚 → 端材ロス込みで約48枚。
・通気胴縁
ピッチ303mm相当なら列数 ≈ 10.0m÷0.303 ≈33列、1列長さ5m → 約165m+端部分。
・ルーフィング
重ね・端部・谷二重を見て「面積×1.2倍」程度でロール換算。
よくある落とし穴(必ず避ける)
・「ルーフィングを途中で切らしてしまい、雨を流す面が分断」
→ ルーフィングは一次防水。重ね方向・幅・谷部二重は規定どおり。
・「通気が途中で詰まる」
→ 胴縁・横桟で堰を作らない(切欠き・スリット)。軒→棟で連続。
・「防振テープを点貼り」
→ 働き巾に対して帯貼り(約30%)が効く。圧着ローラーを使い、端部の角落としで剥がれ防止。
・「遮音シート(室内用MLVなど)を屋根に流用」
→ 屋根の高温・多湿に性能保証が無い例が多い。屋根用として明記された材料を選ぶ。
まとめ:編集部の推奨プリセット(迷ったらコレ)
いかがでしたでしょうか。
・「軽さ・納まり・費用のバランス」
→ 工法C(ビルボード9mm)+工法D(制振テープ30%)+工法G(通気30mm・棟排気)+遮熱ルーフィング。
根拠:下地の質量と板の制振の併用で、高音のカンカンを効果的に削る。
・「体感を最大に変えたい」
→ 工法A(スーパーガルテクト/横暖ルーフ)または工法B(石粒付き)+工法G。
根拠:実験・資料の「ささやき声」相当の提示や、石粒による拡散・吸収の仕組み。
・「屋根を剥がさず最小の手数で」
→ 工法D(制振テープ)+工法G。
根拠:働き巾30%の帯貼りで10dB低減の資料が明快。
どのプランでも、最後に「通気・換気の見直し(屋根通気層30mm以上、小屋裏換気の開口面積)」をセットで考えると、夏の温熱と結露リスクの両面で安心です。
そもそも自分の家のリノベーション・リフォームってどこまでやっていいの?どこから始めればいいの?というかたはこちらから。具体的なリフォームの工程や施工などについて知りたい方はこちらのページも是非ご覧ください!
付録:安全と法規(DIYでも最低限)
・高所作業はフルハーネス型墜落制止用器具・親綱での二重確保を徹底。
・準防火地域・法22条地域では、採用屋根材・換気部材の認定を確認(横暖ルーフは飛び火性能試験合格の案内あり)。
※本記事参考リンクを根拠として、商品名の表記ブレ・仕様は必ず最新カタログで確認してください。
参考文献・根拠リンク(本文中で言及した主な一次情報・技術資料)
・アイジー工業「金属製屋根材 アイジールーフ:遮音性能(断熱材一体で雨音がささやき声程度の提示)」
・ニチハ「横暖ルーフ:硬質ウレタンフォーム一体成形で雨音を軽減/飛び火性能試験合格」
・大建工業「ビルボード:屋根下地に使用、雨音低減・断熱効果、仕様(9mm/12mm)」
・イイダ産業「金属屋根用制振テープ ゼトロ NV-αⅡ:働き幅30%貼りで雨音騒音10dB低減(技術資料PDF)」
・積水化学「ビブレス ルーフシート:屋根用防振シート、部分貼りで雨音や衝撃音を低減」
・宇部建材「屋根下地用防水シート:『防水遮音シート』の系統(カタログ内)」
・国土交通省テキスト「住宅の省エネルギー 設計と施工 2023:屋根通気層30mm以上」
・城東テクノ「小屋裏換気計算の基準と考え方:有効開口面積の目安」
・小野測器 技術レポート「音の大きさ(ソーン):10dBで体感約2倍」「音圧・dBの基礎式」
・石粒付き金属屋根(ディプロマットスター・ディーズルーフィング)に関する遮音・遮熱の解説(複数の施工店・解説記事)
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